安価な中古ミラーレス機とマニアックなレンズでコスパの
良い「アダプター遊び」を楽しむシリーズ、第24回目。
まず、このシステムから、

カメラは、毎度お馴染みアダプター母艦、DMC-G1
中古で1万円以下と書き続けてきたが、玉数の減少にともない
相場も若干上がってきている模様。
ただ、私としては、比較的新しいカメラやレンズでの「プレミアム
価格」という状況は、あまり好きでは無い。
何故プレミアムが付くかと言えば、高くても欲しい人が居るから、
価格が上がるわけである。
では何故、安価に入手できるうちに購入していなかったのか?
まあ、そのあたりの売手と買手のやりとりの仕掛けが、個人的
にはどうも納得行かず、面白く無い訳だ。
さて、レンズだが、YASHICA DSB 50mm/f1.9である。
Y/Cマウント、これはヤシカ・コンタックス・マウントの
事だが、通称ヤシコン、あるいは、このマウントの初号機の
CONTAX RTSにちなんでRTSマウントと呼ばれる時もある。
ヤシカのDSBというシリーズに関しては、あまり情報が無い。
ヤシカのMF一眼用のレンズといえば、M42時代のDSあるいは
DXシリーズ、そして、Y/Cマウント時代のMLシリーズが著名
なのだが、DSBというレンズはあまり出回っていない。

DSB という名称は、恐らくは1960~70年代のヤシノンDSの
Bタイプという意味ではなかろうか?
モノコートであったDSシリーズはM42マウントだが、これを
1980年代に、同じレンズ構成のまま、そして、モノコートのまま
Y/Cマウント版に変更したものがDSBではなかろうか?
そういえば確か、M42版のDS50/1.9も持っていたと思う、
今度ちょっと比べてみるとしようか。

モノコート(シングルコーティング、単層コーティングとも言う)
である事の弱点だが、この後の時代のマルチコート(多層
コーティング)に比べて、逆光時のコントラストが低下したり
する場合があると言う事だ、この傾向は、レンズ枚数が増えると
内部反射が増えて、顕著になると言われている。
このレンズは同時代の同じY/Cマウントのプラナーや、ヤシカ
ML50/1.4に比べてレンズ枚数は少ない、ヤシカの標準レンズは、
f1.4,f1.7,f1.9,f2.0の4種類の開放f値があったと思うが、
小口径になるほど、レンズ構成の枚数が減っていた。
すなわち、DSB50mm/f1.9という構成枚数が少ないレンズに
おいては、モノコートであってもさほど不利にはならない。
そして、その原理的な弱点を知っていれば、コントラストが
低下するような状況では撮らなければ良い訳だ。
余談だが、今から10年以上前の2004年に発売された
コニカミノルタのDimage A2というロングズーム機があった、
このカメラは2/3型CCDと、比較的大型のセンサーを搭載して
いたが、高コントラストの被写体に弱いという弱点があった。
つまり晴天の昼間などではなかなか厳しい訳だ。
けど、このカメラを曇天や雨天などのフラット光の状況で
使うと実に良い発色をしてくれる。このため、Dimage A2は、
「雨天専用機」として、長らく雨の日の撮影に持ち出す事を
続けていた(ちなみに、今でも、現役で雨天専用機として
使っている)
まあ、この話と同様に、DSB50/1.9も逆光や高コントラスト
被写体に弱いのであれば、雨天とまでは言わないまでも、
曇天、夕方、日陰などの状況で使えば良いという訳だ。

「ヤシカ」の準広角、標準レンズに「ハズレ」は殆ど無いが
ボケも比較的綺麗であるから、撮影時の光線条件を選んで
かつ明暗差が出難い近接撮影等を中心とするのが良さそうで
ある。

本レンズは比較的最近、2010年代に購入。Bランクで中古価格
は破格の2000円であったが、レンズの性能からの価値を
考えると、5000~7000円程度迄であれば妥当な相場であろう。
しかし、思うに、このレンズの安さや、発色や描写の傾向を
考えると、本レンズは「雨天専用レンズ」として使えるかも
知れない。安価なG1やNEX-3といったボディに装着し、
(その他の安価なミラーレス機だとMFのピント合わせが
厳しい)壊れても良い、あるいは雨天の方が良く写る、
というシステムにするという事だ。
ただ、前述した「雨天専用機」のDimage A2はAFロング
ズーム機であり、手ブレ補正も(当時には珍しく)搭載されて
いたから、傘をさしながら「片手撮り」が出来る、というメリット
もあるが故の「雨天専用機」であった。
MFレンズの場合は、たとえ小型なミラーレス機であっても
両手での操作が必須となるので、傘をさしながらの撮影は
厳しいため、やはり、この手のレンズは「雨天専用」には
使えないかな・・ なので、まあ、たとえばミラーレス機の
キットズームをその目的に使う方が、壊しても惜しくないと
いう意味では正解であろう・・
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さて、次のシステム。

カメラが RICOH GXR
レンズ(ユニット)は、A12 28mm/f2.5である
過去既に紹介しているシステムだが、広角レンズには
色々な側面があるので、再登場という感じだ。

GXRについては、今更説明する必要も無いが、ボディ側に
撮像素子(センサー)を持たず、レンズ(ユニットと言う)側に
それを持たせ、交換する事が出来る唯一のシステムだ。
これをミラーレス機というカテゴリーに当てはめて良いもの
かどうかは微妙であるが、ミラーが無いという点では、
まさしくミラーレスである。しかし、(デジタル)レンジ機
も、(デジタル)コンパクトも、ミラーが無いので、これらを
まとめて「ノンレフレックス・カメラ」という風に分類する事も
ある模様だが、一般的にはこの呼び名は浸透しておらず、
通常は、ミラーが無くて、レンズ交換が出来るタイプの
カメラを「ミラーレス機」とカテゴライズする状況である。
GXRシステムの長所は、2009年の発売当初においては、
APS-C型のデジタル一眼並みの大型センサーを持つシステム
が小型軽量で実現できる事であったが、その後の、例えば
SONY NEX システム等でも同等の小型化が実現されているので
現代においては、この点はもはや長所とは言えない。
私が思うGXRの長所は、その操作系である。
例えばデジタルカメラの基本操作である、絞り、露出補正
ISO感度が、それぞれ同時に独立した操作子(ボタンやダイヤル、
レバー)にアサインできる機種は限られており、こうした小型の
カメラシステムとしてはGXRとNEX-7しか、この操作系は実現
できていない。
その他の操作系も、極めてオーソドックスながらかなり練れて
いて、なかなか使いやすいシステムに仕上がっている。
最も大きな弱点は、AFのピントが合わない事。これは初期の
コントラスト検出AF方式ではしかたが無いとも言えるが
それにしてもGXRのピント精度は厳しく、実用的とは言い難い。
(また、構造上、MFでピントを合わせるのも厳しい)
もう1つの弱点は、オーソドックスすぎて、エフェクト
あるいは、HDRや連写合成などの特殊機能が何もついていない
事である、ただまあ、これは発売時期を考えるとしかたが無い。
そして、このユニット(A12 28/2.5)の弱点は最短撮影距離だ。
銀塩時代、広角レンズと言うのは、広い風景を平面的に
かつパンフォーマスで撮影するレンズとして使うというのが
一般的であった、例えば、上のダムの写真のような撮り方だ。
デジタル時代になって、広角レンズは、パース(遠近感)の
強調や、撮影アングルの自由度からなる撮影技法が必須に
なってきたように思う、後者は、銀塩(フィルム)時代に比べ
撮影コストが限りなくゼロに近くなったデジタルであるが故、
試行錯誤的な撮り方が可能になったという事であろう。

例えばこのような撮り方は、フィルムコストのかからない
デジタルだからこそ出来るとも言える、つまりこのような
撮り方では、ファインダーを見る事が出来ないから、フィルム
時代では、無駄打ちになるリスクが高くて難しかった訳だ。
で、こうした撮り方の場合に、気になるのは最短撮影距離の
スペックな訳だ。
広角レンズにおいては、最短撮影距離は近ければ近い程良い、
すなわち、被写体に近づけば近づくほど、そこでカメラを
向けるアングルの自由度の高さから、背景の取り込み方を
いくらでも変える事が可能になるからだ。
これは、たとえば望遠レンズはアングルの自由度が効かない
という点と比較して考えると容易に理解できるであろう。
A12 28mm/f2.5は、(35mm判)銀塩換算の焦点距離であり、
実際の焦点距離は、18.3mmである。
一眼用の広角レンズの場合、標準的な最短撮影距離のスペック
はレンズの焦点距離の10倍、すなわち、本レンズ(ユニット)
であれば、18.3cmが標準的であり、これより寄れれば使い易い
広角となり、これより寄れないと、使い難い広角となる。
本レンズの場合、最短撮影距離は20cmだ。実は、これはちょっと
不満である。まあ、焦点距離10倍の法則から言えば標準的な
性能なのだが、RICOHの過去のGRシリーズを思い起こすと
初代GR~GR4 までの1/1.7級センサーのシリーズでは、
マクロモードで驚異の1cmであった。
そして、GXR A12と同じAPS-Cセンサーの、GR,GRⅡでも
10cmと、かなり寄れることを特徴としており、本A12 28/2.5
と比較すると、本レンズの「寄れなさ」が目だってしまう。
さらに、GXRでは、最短あたりでのピントが非常に合い難い事も
問題点を増強している事になる。
まあ、このあたりの話は以前にも書いた事はあったのだが、
要は、こうした事は単なる「事実」であり、だからこの
システムが良いとか悪いとか言う評価には直結しない。
そもそも、このミラーレス・マニアックスのシリーズ記事では
カメラ本体も、レンズも、基本的には、何らかの弱点を持つ
ものばかりである。
最高の性能のシステムが欲しければ、ボディもレンズもかなり
高価なものを買うしかない、けど、それでは、コスパが悪すぎる
のだ。しかも、それでもなおかつ万能なシステムは存在しない。
もし存在しているのであれば、カメラやレンズはそれだけしか
皆買わない事になるであろう。万能で最高なものが無いから、
様々なシステムが林立している訳だ。
このシリーズ記事の1つのコンセプトは「コスパ」である、
つまり、いかに安価なボディやレンズで、高価なシステムに
匹敵する高性能を得ることができるか否かという事だ。
そして、もう1つのコンセプトが「組み合わせ」である、
すなわち、ボディとレンズの組み合わせにおいて、両者の
欠点を相殺する事ができるか否か、という点である。

ただ、残念ながら、GXRシステムの場合は「組み合わせ」の
工夫はしようが無い、例えば、GXRのAF精度が悪いからと
言って、このA12 28mmレンズ(ユニット)を、他のカメラに
装着して使う事は出来ないからだ。
本システムの中古価格だが、GXR本体が約1万円前後、
A12 28mmが25000円前後で、合計35000円位となる。
比較の対象としては、GRであろう、この中古が4万円台後半
なので、その差1万円強。GXRに対してのメリットは、最短
撮影距離(20cm対10cm)と、高感度(3200対25600)である、
で、GXRの場合の最大のメリットはレンズ交換が可能で
ある事だ(マクロ機や、標準ズーム機、高倍率ズーム機に
することができる)
結局、この性能差と価格差をどう見るか、という事になると
思うが、なかなか難しいチョイスという感じだ。
さて、次のシステム。

カメラが FUJIFILM X-E1
ピント合わせ(性能、機能、操作系)に弱点を抱えるカメラで
あるが、まあ、そこを言っていても始まらない。
発色が良いという長所を活かせるよう、最適なレンズとの
組み合わせを模索中だ。
レンズが、ニコンレンズ・シリーズE100mm/f2.8である。
1980年頃の、ニコンEMと同時発売の中望遠レンズだ。
シリーズEの単焦点レンズは、28mm,35mm,50mmそしてこの
100mmが存在するが、内、28mmは輸出向けで国内未発売と
なっていた。まあ、でも、1990年頃には、これらのレンズは
中古市場には逆輸入品なども存在していたので、28mmも
入手不能という訳ではなかった。
私は、1990年代に最初に35mm/f2.5を入手したが、チープな
外観とは裏腹に写りは良かったので(第9回記事参照)
残る50mm/f1.8(第21回記事)や、本100mm/f2.8も
続けて入手した次第であった。
(28mmは若干高価だったので購入しなかった)

他のシリーズEレンズと同様、小型軽量で、ややチープな
外観、レンズ構成も4群4枚とシンプルである。
そして、このレンズはモノコートとの事である。
コーティングの話は、本記事のDSBのところで述べた通りで
あるが、モノコートだからと言って、マルチコートに比べて
写りが劣るという訳ではない。
100mmという焦点距離はどうであろうか?
ニコンAiレンズには、類似のスペックとして、105mm/f2.5が
存在する、この105mmは名玉として名高く、多くの銀塩ニコン
ファンが所有しているレンズだと思う。そして、ニコンは
伝統的に105mmという焦点距離のレンズを何本もラインナップ
していて、100mmという焦点距離のレンズは、Fマウント
レンズの中では、MF時代・AF時代を通じて、このシリーズE
の1本しか存在していなかったと記憶している。

で、銀塩MF一眼時代、50mm標準レンズの次に望遠レンズを購入
する場合、135mm、そして200mmという風に揃えるのが一般的
であった。現代の感覚からは望遠ズーム1本でカバーできる
焦点距離ではあるが、MF一眼時代の初期のズームは画質が悪く、
実質的に単焦点しか使えなかった訳だ。
で、銀塩時代の後期(MF~AF時代)では中望遠レンズが人気と
なり、特に85mmは、各社ともポートレート用レンズとして、
気合の入った高性能なものが目白押しであり、中望遠の代表的
な焦点距離のレンズとなった。
そんな中、100mmまたは105mmというレンズは一般的な135mm
望遠や、人気の85mmの間の焦点距離となり、あまり多くの
ユーザーが保有する焦点距離ではなかったのではなかろうか?
さらには、TAMRON 90mmマクロの人気もあり、ますます100mm
レンズは買いにくい焦点距離となってしまったようにも思える。
ただ、ニコン以外に目を向けると、CONTAX のプラナーおよび
マクロプラナーの100mm、オリンパス OMズイコーの100mm/f2
CANON FDあるいはEF100mm/f2など名玉がズラリと並ぶ焦点距離
であり、ポートレートレンズとしての用途でも、100mmクラスを
選ぶユーザーもニコンユーザー以外であれば珍しくは無かった。
銀塩時代によく言われていたのは「85mmレンズは人物との
距離感がちょうど良いレンズだ、50mmでは近すぎるし135mm
では遠すぎる」という話であった。そして、こういう人も
居たのだが「私は85mmで人物に近づけるほど積極的な性格
では無いので、100mm位でちょうど良い間合いになるんだ」
という話もあった。
しかし、こららの「間合い」の話は、デジタル時代初期の
APS-Cの時代になって、その「適切な」(?)距離感というのは
画角が変わることで失われ、言われる事も無くなってしまった。
そして、そもそも、その距離感の話は、もしかすると、あくまで
85mmをメーカーが売る為の、あるいは85mmを買うための
(欲しいが故に理由をつける)一種の伝説的な話ではないかと
思えてしまう。
まあ確かにパーソナルスペース(他人を警戒せずに近寄れる
ことができる限界距離~動物の縄張りのようなもの)はあると
思うが、心理的な要素は、その被写体の人物との信頼関係に
よるものが大きいし、85mmと100mmの画角の差異など、
ほんの数歩踏み込んだり離れたりするだけで同じようになる
のではなかったであろうか・・?

さて、余談が長くなったが、本レンズの中古購入価格は、
1990年代で16000円程であった。現代では玉数が少なく、
入手が困難と思われるが、先般の記事で E35mm/f2.5も
入手困難と書いたところ、その後、大阪の中古店でたまたま
1本出ているのを見かけた(確か15000円前後であった)
このレンズも丹念に探せば見つかるかも知れないが、
まあでも、前述の通りニコンFマウントでは、85mmや105mmに
名玉が多い為、あえてこのE100mm/f2.8の必要性は少ない
かも知れない。
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さて、次は今回ラストのシステム。

カメラはアダプター母艦のLUMIX G1、こちらは予備機の方で
特定のレンズを使用する場合や、2台を同時に持ち出す場合に
使用している、区別の為、ポディ色を赤と青で色分けしてある。
近年ではボディカラーが色々あるミラーレス機やデジタル一眼も
ずいぶんと一般的になってきたが、このG1が登場した2008年末
には、こうした色のついているボディはまだ珍しかった。
当初は「目立ちすぎる」とか「色が被写体に写り込む」とか
言ってカラーボディを嫌うユーザー層も居たが、近年では
それが当たり前になってきて、そういう意見も殆ど聞かない状況だ。
レンズは、一見望遠レンズに見えるが、なんとこれが広角
レンズである。
ミノルタMC Wロッコール28mm/f2というもので、1970年代の
発売だ。Wはワイドの意味なので気にしなくても良い。
MF銀塩時代の28mm/f2というレンズには、他社にもこうした
長焦点仕様のものが存在する、PENTAX ,CONTAXが代表的で
あろう(他にもNIKON、オリンパス、CANONにも28/2があるが
長焦点型ではなかったように記憶している)
銀塩時代での噂によると、MINOLTA,PENTAX,CONTAXの
MF長焦点型は、皆、同一の設計者によるものという話もあった。
ただ、良く調べてみると、レンズ構成はこの3本は全て異なる
模様で、単なる噂であったのかも知れない。
(PENTAX M28/2は所有しているので、いずれまた紹介しよう)
ここで長焦点とは、レンズの焦点距離に対して鏡筒の方が
長いという意味である(その逆が短焦点)この用語は、カメラ
用レンズの世界では一般的ではなく、あまり使わない方が良い
かも知れない。使い難い理由の1つは、広角単焦点レンズを
短焦点と勘違いして覚えるビギナー層があまりに多い事からである。
天体望遠鏡の世界では、長焦点、短焦点は一般的な用語だが
これもまたここでの鏡筒うんぬんの話とは意味が若干違う。
このように定義があいまいなので、カメラの世界では、
あくまで、望遠、標準、広角のようにレンズ焦点距離を
分類するのが一般的なのであろう。

見かけは望遠レンズだが中身はあくまで広角、このギャップが
なかなか面白いのだが、一般的なf2.8級の28mmレンズに
対し、開放f値が1段明るくなっただけで、何故こんなに
大きく(長く)重くなってしまうのであろうか?とも
思ってしまう、まあつまり設計上は無理をしているという
ことである。
「レトロフォーカス」という用語がある(これは正しい
カメラ用語だ)一眼レフでは、ミラーボックスが存在する
事から、マウント面からフィルム(または撮像素子)までの
距離(フランジバック)は、各マウントで40数mm程度ある。
このため、このフランジバックより短い焦点距離の広角
レンズは、レンズ後群に凸レンズを配して焦点位置を伸ばす
(遅らせる=レトロ)という意味である(「逆望遠型」とも
言われている)
一般的なレトロフォーカス型の一眼用広角レンズだとレンズ
枚数は5枚前後が多いのだが、このMC28mm/f2は
その約2倍の9群10枚構成である。
複雑なレンズとは言え、最短撮影距離は、一般的な28mm
レンズ並みの30cmだ。

f2の大口径だから、背景ボケを活かした広角マクロ的な
使い方が良さそうではあるが、最短30cmでは、もう一歩
寄れないという不満がある。
レンズ構成が複雑(すぎる)なので、大きく重くなる他、
レンズ張り合わせ面が増えて、内面反射等によるコントラスト
低下などの性能面でも不安なレンズだ。
銀塩時代から持っていたレンズであるが、写りがイマイチで
あったので、あまり使用していなかった。
それに銀塩時代は、28mmといえば典型的なパンフォーカス
レンズであるから、前述のGXR A12 28/2.5の話では無いが、
絞りを開けて使う必要性などあまり無かった訳である。
まあしかし、今やミラーレス時代である、撮影の技法に
制約は無く、どんな撮りでもありな時代である。

けど、マイクロフォーサーズ機で使った場合の、画角56mm
相当にf2レンズであれば、まあ、銀塩時代の標準画角では
あるものの、ボケ量の自由度は、やはり銀塩50mm/f1.4標準
などに比べて圧倒的に少ない。
これが、後年のSIGMA 28mm/f1.8のように寄れる大口径広角
であれば、ボケ量をはじめ構図上の自由度も格段に高まり、
使いやすくなるのだが、まあ、なにせその両者には四半世紀
もの時代の差がある、1970年代のレンズとしてみれば、
これでもずいぶんと頑張った方なのであろう。

写りは全体的に特筆するべき点は無い。むしろ一般的な
f2.8~f3.5級の28mm広角レンズに比べたら物足りない点も
あると思う。
しかも中古価格も高い、28mm/f2級のMFレンズの中古は
いずれも高価であり、特にCONTAX製のものはとんでもなく
高価であった事を記憶している。
開放f値が明るいレンズであると、一般的には高性能レンズ
という事となり、定価も中古相場も高いのが常識ではあるが
写りの点からすると、必ずしも開放f値が明るいものが
良い訳では無いのは、何度もこのシリーズ記事で書いている
通りである。
開放f値が小口径の方が優秀なレンズであるのは、銀塩MF時代
であれば、特に標準50mmのf1.7~f1.8級にその傾向が顕著で
あったが、同様に中望遠85mmも当初はその傾向があり、
さらに、広角28mmも、特別な例外を除いては、やはりf2.8級の
方がよく写るレンズであるようにも思える。
まあ、なので、1980年前後の銀塩MF一眼用レンズを購入する
際には、あまり大口径である事に拘る必然性は無いという
事も言えるかも知れない、高価なだけなレンズはコスパが
悪いという事にも繋がってしまう。
本レンズの購入価格だが、1990年代に24000円ほどで入手
している。現在冷静に判断すれば、仕様や描写力の点から
すれば、ちょっと高すぎたように思える、つまりコスパが
悪いという事だ。
したがって、本レンズを入手する必然性は高くは無い、
より高性能な大口径広角が欲しければ、できるだけこれより
後の時代のものが良いであろう事は間違いない。
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さて、今回の記事では「びっくりするほど良く写る」という
レンズは登場していない。まあ、でも、これくらいのレベルが
オールドレンズの世界では「普通」という事であろう。
オールドだから良い訳でも無いし、オールドだから味がある
という事でも無い、オールドレンズはあくまで古いものである
から基本的には数十年も後の現代の新しいレンズには勝てる
筈も無いのだ。まあ、あえてオールドに存在意義があるとすれば、
極めて安価でかつ極めて高性能、すなわちコストパフォーマンス
がとても良いレンズ(やシステム)であれば、十分に意味がある
という事になる、
まあ、なかなかそういうレンズやシステムは多くないが、
中には極めてコスパの良いものもある。
本シリーズ記事では、そうした安価で性能が高いシステムを
見出して、載せて行きたく思っている。
次回記事に続く・・