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レンズ・マニアックス(47)

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過去のレンズ紹介記事では未紹介のマニアックな
レンズを主に紹介するシリーズ記事。
今回は、未紹介レンズ2本と、紹介済みレンズ2本の
比較を行う。

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まず、今回最初の(未紹介)レンズ
_c0032138_15152008.jpg
レンズは、YONGNUO(ヨンヌオ) YN100mm/f2 N
(新品購入価格 19,000円)(以下、YN100/2)
カメラは、NIKON D5300(APS-C機)

2018年頃(?)に発売された、中国製のフルサイズ対応
AF中望遠レンズ。

YONGNUOは、いわくつきのメーカーであり、CANON製の
1990年代のAF単焦点レンズをフルコピーした製品を
発売している。

既に、本シリーズでは、YN50/1.8 (第20回記事)
と、YN35/2N (第35回記事)を紹介している。
(注:別シリーズ「レンズマニアックス・プラス」
「海外レンズマニアックス第2回YONGNUO編」にて
4本のYONGNUO製レンズを紹介済み)

それらのレンズは、相当するCANON純正レンズ
EF50/1.8(Ⅰ)および、EF35/2を所有していて、
それとコピー品を比べた結果、ほぼ同じものである
事が判明した。(描写に係わる部分では、絞り羽根の
枚数が異なる程度である。ただし電子部品や、その仕様
が異なる模様であり、電子マウントアダプターの使用時
に通信プロトコルの差で、レンズの振る舞いが異なる)

交換レンズのような、光学系、駆動系、電子部品等を
含む複雑な機器は、外から見ただけでコピーできる
ようなものでは無い。よって、個人的な見解では、
これらは同一の生産工場で、同一の設計基準による
部品を用いて製造されたものである、という結論だ。
_c0032138_15152109.jpg
恐らくは、CANONの海外製造工場であったのだろう。
海外で作れば生産コストが安価になるから、レンズが
沢山売れた時代(1990年代~2000年代)においては、
海外生産は、(各社)当然の措置であったと思う。

ただ、今の時代になっても「Made in Japanの品質
がナンバーワンだ」と信じている呑気なユーザー層は
とても多いから、各社が海外生産をやっている事は、
一般層に対しては、まず公開されない。

そして2010年代からはカメラやレンズの市場が縮退、
2013年頃からは、各社とも「高付加価値戦略」に
転換している。つまり高性能なレンズを作り、高価に
売って利益を稼ぎ、それらを買うユーザー数が少なく
なったとしても、事業が継続できるという仕組みである。

言い方は、わざとトゲがあるように書いてはいるが、
これは別にCANONだけの話ではなく、カメラ・レンズ
メーカーの全社が行っている普遍的な市場戦略だ。

各社が高価格商品の少量生産戦略に転換した事により、
海外生産による量産体制も、2010年代からは縮退
していると思われる。海外工場を閉鎖、あるいは契約
解除するケースも、きっと少なくは無いであろう。

そして、高付加価値化戦略の結果、2010年代末頃からは、
ますますカメラやレンズが売れなくなってしまっている。

その理由は、マニア層や中上級層が、余計な付加価値で
高価になりすぎた新製品に、魅力を全く感じられなく
なったからである。その証拠に、高価な新製品について
個人的なレビューをしているマニア等は1人もおらず、
そういう無駄に高価すぎる新製品の話をしている人は、
全くのビギナー層(=モノの価値が判断できない)か、
又は、そうした高額製品を売りたいと思っている業界
(流通)関係者の宣伝記事のみである、という状況だ。
あまり正常な市場状態とは言えないが、売れない物は
売れないので、まあ、やむを得ないのであろう。

さて、話が脱線しているので、少しづつ元に戻す。
_c0032138_15152118.jpg
YONGNUO製品は、フルコピー品であった事が何らかの
問題を起こしたのではなかろうか?と推察している。
具体的には、2016年頃に起こった「EF50/1.8Ⅱの
偽物の流通の発覚事件」である。(注:これが
YONGNUO製であったかどうかは明らかにされていない)

ともかく、それ以降、YONGNUO製品はCANON EFマウント
のコピー品をNIKONマウントに転換しての販売を始めた。

NIKONマウント品は、EFマウント版と同じく、AF用の
直流モーターを内蔵していて、今回使用している母艦の
D5300のような初級機でも、それをAFで使用できる。

ただし、MF時には、距離指標の動きとピントリングの
動きが逆方向になり、非常に気持ち悪いし、そもそも
USM仕様では無いので(超音波モーターは自力調達する事が
出来なかったのか?)よって、シームレスMF仕様では無い。
(注:現代のCANON製純正レンズは、ほぼ全てがUSM
又はSTM仕様で、それらは全てシームレスMFが効く。
これらは「高付加価値化」の所以となっているので、
この部品は国内において生産されるのであろうか・・?)

「シームレスMFでは無い」という事は、AF/MF切換SWを
持つ本レンズは、AFモードのままではMFは効かず、
ピントリングは無効であり、「MFモードに一々切り替え
無いとMF操作が出来ない」という状態である。

まあつまり、MF時に若干の課題はあるが・・ それでも
AF中心であれば使えない訳では無いし、おまけに、
いずれのレンズも1990年代~2000年代の長期に渡り
生産されていたCANON製レンズと等価な性能であるから
安心して使う事ができる、そして勿論、安価である。

例えば今回紹介のYN100/2(N)は、元々の設計は
CANON EF100/2 USM(1991年発売)である。
そのレンズは銀塩時代の1990年代に愛用していたの
だが、事情があって知人に譲渡してしまっていた。

後年に、そのEF100/2を買いなおそうとしたのだが、
意外にまで中古相場が下がらず、3万円~4万円の
高値相場がずっと続いていた。まあ、現代のCANON
EFレンズでは100mmの単焦点が存在しない為、そうした
ニーズを持つユーザー層に高価でも売れるからであろう。
(注:歴史を紐解けば、CANONにおける100mmレンズは、
1950年代から1990年代迄、いつの時代でも、高描写力
を誇る「看板レンズ」であった次第だ。
NIKONが100mmの焦点距離を避けて、105mmのレンズ
しか作らなかった事も、これが原因であろうか?)

そして100mm級単焦点レンズは、CANON EFで無くても
優秀なものが沢山ある激戦区だ。同じF2版としても
MFではOLYMPUS OM100/2、CONTAX Planar 100/2
とか、AFではMINOLTA AF100/2、NIKON DC105/2
そして、アポダイゼーションのLAOWA 105/2など、
いくらでも名レンズが存在しているし、マクロや、
類似の焦点距離の中望遠レンズまで含めると、100mm
級には、数え切れない程の名レンズが存在している。

そんな状況である為、CANON純正EF100/2の指名買いは
意味が無いと諦め、そのコピー品である本YN100/2を
購入した次第である。

既に、YN50/1.8とYN35/2Nを入手していて、それらの
オリジナルレンズと厳密な比較検証をしており、
元々のレンズが持つ課題を除いては、YONGNUO版でも
何ら問題が無い事はわかっていたので、今回の
YN100/2(N)は、比較的安心しての購入だ。
もし、これに何か問題があるならば、オリジナル版を
買ったところで、同じ(課題を持つ)だ。

まあ、しかし、本レンズとNIKON D5300の組み合わせ
に限って言えば、露出が不安定(概ねアンダー気味)に
なるという課題はある。(注:露出補正等で回避可能)
しかし、これはレンズ側の責任とは言い切れず、様々な
NIKON機で、稀に特定の他社レンズとの組み合わせで
露出アンダーになったり(例:NIKON機+TAMRONレンズ
自社製でもNIKON Df+AF-S Micro 105/2.8等)
AFが効かない(例:NIKON機+SIGMA HSMレンズ)と
いった問題が発生している状況だ。

(参考:本レンズの露出アンダー傾向は、多くのNIKON
機との組み合わせで発生する。D500では顕著であり、

D300、Dfはさほどでも無い。また、D500との組み
合わせでは、AF動作が不安定となったケースもある。
露出アンダー状態は、基本は露出補正で回避するが、
機種によっては中央重点測光で緩和できる場合もあるし
他のレンズとの組み合わせでは、どう対処しても露出が
アンダ-気味かつ不安定なままの事もある。
基本的には、これはレンズ側の問題ではなく、個々の
NIKON機側の問題点(バグ等)であると認識している。
又、それらのNIKON機での課題は、何らかの制御ソフト
の改変時、具体的には、2007年、2013年、2016年、
2020年頃に発売の機種群に起こっていると推察できる。
その改変の時代以降の他社製レンズでは、変更に追従
しての修正版もあるが、組み合わせの時代の微妙な
差異で不具合が起こる。このあたりは極めて複雑だが
マニア層での対処法としては「時代の異なるNIKON機を
複数台所有し、レンズ毎に適正な機体を選ぶ」がある)
_c0032138_15152193.jpg
で、本レンズはNIKONマウント化した事で、USMでの
シームレスMF仕様は失われていて、全般的にAF/MFの
弱点は存在するが、写りはそこそこ良い。

説明書にはレンズ構成が記載されていて、6群8枚だ。
非球面や異常低分散ガラスを使わない、昔ながらの
オーソドックスな(レガシーな)設計であり、当然、
EF100/2と全く同じである事は勿論、他社のMF時代
(1980年代)の100mm/F2級レンズとも同等であろう。
まあ、CANON EF100/2のオリジナル版から既に、MF時代
の他社100mm/F2級の設計を継承(参考に)している、
とも言える。

なお、CANON自身には、MF時代の1981年の(New)FD
100mm/F2というレンズが存在している、そちらは
所有しているが、その当時のトレンドである小型軽量化
の市場ニーズを受け、4群6枚というシンプルな設計と
したが、単純すぎる設計が所以か?、像面湾曲収差等を
主因としたボケ質破綻が頻発する為、個人的には低評価で
あり、あまり好きなレンズでは無い。

(追記:後日の研究で、当該レンズは、より古い時代、
1959年製のR100mm/F2のリメイク版である事が
判明した。そうであれば描写力が低いのも納得だ。
同時期、1980年代前半には、CANONでは同様に、
かなり古い時代のズームレンズを復刻した例もあるが、
その理由が理解できない。何故、古い低性能なレンズを
リメイクして新発売するのだろうか? まあ、まさか
とは思うが、それら古いレンズを設計した人が昇進して、
お偉いさんになった事への忖度だとか・・ ??) 

そして、当然、CANONにおいても、(New)FD100/2が
低性能である事は認識していただろうから、AF時代の
1990年代に入って、6群8枚に設計変更し、EF100/2と
した訳だろう。

本YN100/2(N)あるいはオリジナルのEF100/2(USM)は
悪い描写力のレンズでは無い、しかし既に30年以上も
前の設計のオールドレンズだ。
それこそ、最新の「高付加価値」型の100mm級単焦点と
比較すると、細かい点で見劣りするかも知れないが、
前述のように、それら新鋭レンズは高価すぎる為、
コスパが極めて悪い。

コスパを重視するならば、本レンズの選択肢は悪く
無いであろう、ただ、AFがらみは現代的な仕様とは
言い難い点もある為、実質的な適正相場は、1万円台
前半程度、まあ、新品で買うと、ちょっと割高な印象が
ある為、滅多に出ないとは思うが、気長に中古を待って
みるのも良いかも知れない。
_c0032138_15153428.jpg
以下余談だが、コストを重視した2万円程度の予算において、
NIKON又はCANONデジタル一眼レフ用の、安価な(中国製等)
「AF単焦点中望遠レンズ」が欲しい場合は・・
NIKON機で使うならば、AFという観点で本レンズしか選択肢が
無い。海外製が不安であれば、中古になるがAiAF NIKKOR
85mm/F1.8(1990年代、ミラーレス・マニアックス
第66回記事)が、本レンズの価格と同等以下の中古相場で
かつ優れた描写力を持つので、そちらを選ぶ事もアリだ。

CANON機(EOS一眼レフ)で使うならば、本レンズか、
または、オリジナルのEF100/2の中古がある、純正品は
中古でも若干割高となるがUSM仕様であり、シームレスMFが
使える。別の選択肢として、中国製Meike 85mm/F1.8
(AF版、6群9枚)(本シリーズ第38回記事)が、
秀逸な描写力を持ち、むしろ本レンズをも上回る。
ただし、Meike 85/1.8もAFの構造はシームレスMFでは
なく、AF/MF切換式だ。

いずれのレンズもフルサイズ対応ではあるが、85~100mm
という焦点距離が「人物撮影用だ」とかは、あまり意識
せず、一般撮影であれば、フルサイズ機では無く、
APS-C機を母艦とするのも悪く無い。
周辺収差が消え高画質化する他、APS-C機の低価格機は
小型軽量というメリットがあり、普段使いに最適となる。


また、上級APS-C機はAF性能に優れた俊敏な業務用途機も
あり(例、NIKON D500やCANON EOS 7D MarkⅡ等)
それらの機体で、この手のレガシーな中望遠レンズを
使う場合、AF速度・精度の不満が若干解消できる。

なお、購入予算が6万円程度まであるならば、TAMRON
SP 85mm/f1.8 (Medel F016)(本シリーズ第4回)の
選択が堅実であろう、ワンランク上の描写性能や
現代的な仕様での実用性を誇るレンズである。

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では、次の(未紹介)レンズシステム
_c0032138_15153478.jpg
レンズは、RMC TOKINA 100-300mm/f5.6
(ジャンク購入価格 1,000円)(以下、RMC100-300)
カメラは、FUJIFILM X-T10 (APS-C機)

詳細不明、恐らくは1980年前後の製品であるが、
当時のTOKINAの望遠ズームは類似仕様のレンズが多く
発売されていた。本レンズは、本シリーズ第45回
「ジャンクレンズ編Ⅳ」で紹介した、RMC TOKINA
80-200/4の姉妹レンズだと思われる。
_c0032138_15153430.jpg
ただ、RMC(TOKINA)80-200/4は、まずまずの描写力
であったが、本RMC100-300/5.6は、イマイチだ。
ズーム全域で解像感が低く、低コントラストであり、
逆光耐性も弱い。

この関係は、同時代のCANON (New)FD70-200/4
(ハイコスパ名玉編第6位)と、その兄貴分の
(New)FD100-300/5.6(本シリーズ第34回記事)
との関係にも、とても良く似ている。
そちらの組み合わせでも、同一のシリーズながら、
100-300mmの方に、大きな性能上の課題が存在して
いたのだ。(具体的には、NFD70-200/4は良く
写るレンズだが、NFD100-300/5.6はイマイチ)

CANON版の紹介記事では、「同時期の同じシリーズの
レンズであっても、設計の良否等の理由で、同等の
性能になるとは限らない」と締めくくっていたのだが
本レンズRMC100-300/5.6と、弟分のRMC80-200/4の
関係性を見て、別の解釈も生まれてきている。

すなわち「1980年前後では、望遠端300mm級ズーム
を作れるほどには、まだ各社とも、技術的な基盤が
できあがっていなかった」という分析である。
_c0032138_15153495.jpg
・・まあ良い、それがわかっただけでも十分だ。
近年において、私が沢山のジャンクレンズを購入する
理由は2つあって、まず1つは、こうした古い時代の
レンズには、様々な性能上の欠点が存在するので、
その欠点を見つけ、かつ、それを回避して使う為の
練習用教材とする事(=これを「ワンコイン・レッスン」
と呼んでいる)


もう1つは、レンズ関連技術の歴史的変遷を研究する
意味がある。つまり、ここで得られた情報は、
「1980年前後の望遠ズームは、300mm級はまだ発展
途上である」という事である。

ただし、これは「当時の300mm級ズームを買うな!」
という意味では無い。さらに研究を進めるならば、
いったい何処に無理をしたから、どういう類の収差が
発生し、どのように画質が落ちているのか? という
さらなる深堀りをした研究ができる要素もある為だ。

現代の高性能レンズばかりを使っていたら、それらは
ほぼ性能的には問題が無い為、欠点が見え難くなって
しまうし、どこがどう良いのか?という点も分かり難い
と思う。明らかに課題のあるレンズを使ってみれば、
その弱点がはっきりわかる訳だから、そういう目線を
鍛えれば、現代レンズにも存在する僅かな弱点を発見
できる眼力を身につける事も、出来るようになるだろう。
_c0032138_15154624.jpg
しかし、本レンズに限っての話をすれば、本レンズの
弱点である、低解像感や低コントラスト(これらは、
いわゆる低描写力、低性能)といった課題を回避して
使うのは容易では無い。これは普通の手法や技法では
まず無理であり、被写体の選択や表現手法を含めて
工夫しないかぎり、低描写力を回避するのは困難だ。

まあ、本レンズは実用的には、購入に値するレンズでは
無いが、研究目的や練習用途としては、1000円という
ジャンク価格であれば、許容範囲とは言えるであろう。

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さて、次のレンズは過去紹介済みのレンズであり、
続く4本目のレンズとの比較とする。
_c0032138_15154622.jpg
レンズは、smc PENTAX-DA 70mm/f2.4 Limited
(中古購入価格 22,000円)
カメラは、PENTAX KP(APS-C機)

2006年発売のAF単焦点中望遠レンズ(APS-C機専用)

本レンズの発売時、一部のマニア層において、
数年前にコシナ社から発売されていた
「Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm/f2.5 SL」
(次に紹介する)と本レンズは、「レンズ構成も仕様も
そっくりであり、コピー品である」という噂が流れた。
私もその噂を聞いて、レンズ構成図等を調べてみたが、
確かに、ほとんど同じであった。

ちなみに、もう少し詳細のスペックは、
レンズ構成が5群6枚、最短撮影距離0.7m
フィルター径φ49mmとなっている。
_c0032138_15154647.jpg
で、COLOR-HELIAR 75/2.5の写りは気に入っていた為、
私は、「コピー品ならば本レンズは不要か・・・」
と思ってしまい、その後10年弱も、本DA70/2.4の
購入を躊躇う理由となってしまった(汗)
私が本レンズを購入したのは、コーティング性能を
強化した後継版(HD DA70/2.4、2013年)に
リニューアルされた為、本smc版の中古相場が下がった
事を理由としている。

ただ、購入が遅れたのは若干失敗であった、
本DA70/2.4を入手してわかった事は、「たとえレンズ
構成が同じあっても、カラヘリはフルサイズ対応だし
本レンズは、非常に小型軽量な中望遠であるし、
両者、使用目的も全然違うし、対応イメージサークルの
違いで、写りも異なるでは無いか・・・」という事で
あった。
まあつまり、現在において私は「両レンズは用途開発上
では、全くの別物」という認識であり、噂に惑わされて
本レンズの購入が遅れた事を後悔している。
_c0032138_15154609.jpg
ただまあ、PENTAXのこのレンジ(範囲)には、超名玉の
FA77/1.8(通称:ナナナナ)が存在している。
(ミラーレス・マニアックス名玉編第1位を獲得)
「ナナナナがあった為、DA70/2.4の必要性が下がった」
という理由も否定できない。

しかし、本レンズ入手後は、こちらも同様であり、
「ナナナナとDA70/2.4は、使用シーンも全く異なる、
 単に焦点距離とかのスペックが似ているからと言って
 同じ目的で被るから不要、とは言い難いなあ・・」
という感想(意識)に変わってきているのだ。

まあ、他の下世話な例で言えば、
「前の彼女と失恋したからと言って、顔だけが似ている
 次の彼女を探しても無意味だ。性格を始め、人それぞれ
 個性があるから、同じ感情を持つ事など有り得ない」
という話と同様だと思う。
(さらなる余談。古典の名作「源氏物語」は個人的には
大好きな作品ではあるが、光源氏が、母親の桐壺の更衣→
藤壺→紫の上、と、顔や姿形だけ似ている女性ばかりを
追い続けている感覚は、どうにも理解しずらい)

さて、本レンズDA70/2.4であるが、小型軽量で、
小旅行や散歩撮影には最適な「常用レンズ」である。
描写力上の不満は特に無く、価格もそう高価では無い。

大きな弱点は無いが、固定式(&伸縮式)のフードが、
せっかくの小型化の特徴を若干損なわせている。
しかしながら、旧型のsmcコーティングは、新型HD型
よりも逆光耐性に若干の課題を持つと思われるので、
この固定フードは必須だ。

なお、レンズ前部にフィルターは装着できず、固定
フードのさらにその先にある伸縮式フードの前部に
しかフィルターは付けられない。伸縮式フードは
傾いてしまう場合もある為、気持ち悪くて、事実上
フィルターは使えない、レンズ前部から異物等を
落とさないように注意して使う必要があるだろう。
_c0032138_15155557.jpg
さて、ここでは続く次のレンズとの比較の為、
私の個人データベースから、本レンズの評価得点を
記載しておく。なお、例によって、こうした評価の
項目はユーザー個々により異なるだろうから、この
数字だけが一人歩きする事は好ましく無い。
評価は、あくまで個々のユーザー自身が行うべきだ。

【描写表現力】★★★★
【マニアック】★★★☆
【コスパ  】★★★☆
【エンジョイ】★★★
【必要度  】★★★☆
・評価平均値:3.5点

悪い点数では無いが、安直な仕様が故に、使っていて、
あまり本レンズ独自の楽しさがある訳では無く、
「エンジョイ度」の評価が、標準点となっている。
また、類似の焦点距離に、超名玉のFA77/1.8が
存在している為、PENTAX K(AF)マウントの中望遠
レンズとしての必要度は、あまり高くは無い。

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次は、今回ラストの(比較対象、紹介済み)レンズ
_c0032138_15155592.jpg
レンズは、Voigtlander COLOR-HELIAR 75mm/f2.5 SL
(読み:フォクトレンダー カラー ヘリアー
 注:スペル上の変母音の記載は省略している)
(新品購入価格 43,000円)(以下、CH75/2.5)
カメラは、SONY α6000(APS-C機)

2000年代初頭の、MF単焦点中望遠レンズ。

こちらは、前で紹介の「smc PENTAX-DA 70mm/f2.4
Limited」の設計のコピー元と、マニア間で噂になった
レンズである。


既に結論は概ね出てはいるが、たとえコピーレンズで
あっても、用途がまるで異なる為、同じものだとは
言い難い。(前述の「源氏物語」の例をあげるならば
「藤壺」と「紫の上」は、親戚で顔が似ているからと
言っても、その2人の性格は、まったくの別物である)
_c0032138_15155580.jpg
レンズ構成は、5群6枚の変形ダブルガウス構成、ここが
一部のマニアが気になった(コピー元となった)点だ
とは思うが、元々は、この構成は、銀塩MF時代の小口径
標準(50mm/F1.8級)レンズの殆ど全てが採用していた
オーソドックス(普遍的)な構成である。

「レンズ構成が同じであればコピー品だ」と言うならば、
銀塩時代の各社レンズは全てコピー品となってしまう。
結局、完成度の高い優れた設計を目指していけば、各社
とも同じ結論(結果)になっていくのは当然であろう。
それに、同じレンズ構成であっても、個々のレンズの
曲率、屈折率、色分散、配置、サイズ等が違えば、同じ
写りにはならない。(注:だいたいの傾向は似てくる)

で、完成度の高い銀塩MF標準レンズの構成を、そのまま
2倍程度にスケールアップし、100mm/F2~F2.8級と
した例は、各社に、いくらでもある。
本レンズは50mm/F1.8級小口径標準を、およそ1.5倍に
スケールアップし、75mm/F2.5としたのであろう。

そうであれば、前述のDA70/2.4が「本レンズをコピー
した」という噂も、真偽を疑う必要が出てくる。
銀塩標準レンズからの「ジェネリック設計」なので
あれば、各社が偶然、そのような設計思想に行き着く
確率は決して少なくは無い。

なお、他のスペックだが、最短撮影距離0,7m、
フィルター径φ49mmは、これらもDA70/2.4と同じ。
ただし、本CH75/2.5はフルサイズ対応MFレンズであり
金属仕上げ、ずっしりとした重厚感と高級感がある。
DA70/2.4は、APS-C専用のAFレンズで極めて小型軽量
であって、両者を構えた時点で、どのような写真を
撮りたいのかの、大きな感覚的な差異が生じる。

具体的には、AFのDA70/2.4を構えれば安直な気分となり、
本CH75/2.5は、もっと真剣な気分にならざるを得ない。
ただ、だからと言ってCH75/2.5の方が良いとは限らず、
例えば、気楽な散歩撮影や小旅行などでは、安直に
撮れるDA70/2.4の方に分がある、という認識だ。
_c0032138_15155584.jpg
さて、今回はDA70/2.4との換算画角を揃える為、
フルサイズ対応の本CH75/2.5を、APS-C機で使用、
この際の「構えた時の感覚の差」を体感したかった訳だ。

まあそれに、フルサイズ用レンズをAPS-C機で使用した
方が画質が向上する、イメージサークルに大幅な余裕が
ある為、MTFを始めとする周辺収差増加による課題の
大半が解消されるからだ。
別の例を挙げれば、「牛肉の美味しい部位」のみ
使っている、という事になる。

本レンズは、その発売当時は各種MFマウント版(Ai,FD,
MD,PK,OM,Y/C,M42)があったが、MINOLTA MDマウント
版を選択した。
その当時はまだ銀塩時代であったが、MINOTA MDマウント
には、優秀な中望遠レンズが存在していなかったからだ。
(所有している物はあったが、好みの描写では無かった)

なお、MINOLTA MC/MDマウント機は全てがMF(一眼レフ)
であり、最高シャッター速度も、殆ど全てが1/1000秒、
稀に(X-1のみ)1/2000秒という貧弱なスペックであり、
逆に言えば大口径(F1.4等)のレンズを使いたくても、
この最高シャッター速度では無理なので、本レンズの
開放F値が若干暗めな事は、むしろ、MDマウント機用と
しては適切であった。
_c0032138_15160156.jpg
本レンズの長所は、銀塩MF標準のスケールアップ・
ジェネリックである事による、安定した描写力がある。
軽微なボケ質破綻等の課題は持つが、そういう点でも
現代のミラーレス機で本レンズを使うならば、回避の
方法論は存在する。

弱点は、セミレア化している事である。
発売約20年で、その間、中古は殆ど見ず、1~2回
程度しか流通した記憶は無い。

こういう状況で、あまり好評価を行うと投機対象と
なってしまうリスクもある。現に、兄弟レンズの
マクロアポランター125/2.5は、発売時定価の2倍
程度の高値の15万~20万円の相場となってしまった
のだ。勿論、そのレンズに、そこまでの価値は無く、
コスパが極めて悪い。
(本シリーズ第12回、使いこなしが難しいレンズ編で、
同レンズはワーストワンの不名誉な記録を残している)
私は、そういう不条理な状態で売買をする気は毛頭無い
が、もし同レンズが故障したりした場合、代替購入が
出来ずに困ってしまう事になるだろう。

本CH75/2.5も同様、単なるMF標準レンズの拡大版だ。
例えば、50mm/F1.8レンズを、APS-C機で使えば、
殆ど本レンズと画角や描写力は同等となる。
そうしたレンズに高値をつける必然性は無く、まあ、
「たまたま見つけて、安かったら買えば良い」と、
そんな風に気楽に考えておけば良い。

さて、DA70/2.4との比較の為、本CH75/2.4も、
個人データベースから評価得点を引用しておこう。

【描写表現力】★★★★
【マニアック】★★★★☆
【コスパ  】★★★☆
【エンジョイ】★★★☆
【必要度  】★★★☆
・評価平均値:3.8点

DA70/2.4より評価平均値が上回っている理由は、
本レンズの「マニアック度」評価点が高い事が大きい、
また、コスパ3.5点は、ちょっと甘い評価点かも知れない。
トータル3.8点は悪い点数では無いが、本ブログでは、
このデータベース評価平均値が4.0点を超えない限り、
各種「名玉編」記事にノミネートされる事は無い。

まあ、普通の「悪く無いレンズ」という感じであろう。
本CH75/2.5を無理に探す必要は無く、安直さが気にならない
のであれば、DA70/2.4で十分に代替できるであろう。

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さて、今回の第47回記事は、このあたり迄で・・
次回記事に続く。

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