本シリーズは、レンズの焦点距離別のカテゴリー毎に、
それぞれの最強レンズを決定する、という主旨である。
![_c0032138_15035978.jpg]()
今回は「超望遠編」、このカテゴリーは、換算焦点
距離が400mm以上の焦点域を含む、ズーム又は
単焦点レンズとしておく。
なお、銀塩時代のフルサイズ対応300mm単焦点レンズ
等は、当時の機材環境においてはやや珍しく、超望遠と
言えたかも知れないが、銀塩末期には望遠端300mmを
含むズームレンズも普及した為、300mm域は当たり前
の望遠焦点距離となっていた。
それ故にの「400mm以上」が「超望遠」の定義である。
この条件に当て嵌まるレンズは、多数所有してはいるが
古い時代のものは、ばっさりと割愛し、近代(およそ
2010年代前後)の物だけを決勝戦に「シード」として
エントリーする事としよう。
400mm級ズームが殆どとなるが、300mm域までで
最も性能が高いと思われるズームを1本、そしてμ4/3
専用の300mm単焦点レンズ(換算600mm)を加えて、
計5機種で、決勝戦を対戦する。
なお、惜しくもノミネートされなかったレンズ群は、
いずれも、ミラーレス・マニアックス、特殊レンズ、
等の旧記事でも紹介済みだ。そして、さらに機会が
あれば、そういう超望遠レンズ群を、また特集する。
---
まずは最初の決勝進出超望遠レンズ。
![_c0032138_15040634.jpg]()
レンズ名:TAMRON SP AF200-500mm/f5-6.3
Di LD [IF] (Model A08)
レンズ購入価格:49,800円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)
2004年発売のAF超望遠ズームレンズ。
本レンズは、異マウントで2本所有している。
いずれもドラゴンボート競技撮影専用の業務用レンズ
として利用している。
内蔵手ブレ補正機能も、超音波モーターも搭載していない
やや古い時代のレンズではあるが、それ故に、過酷な
撮影環境(雨天、酷暑、水気、潮風等)においても
気兼ねなく使用できる「消耗用レンズ」である。
![_c0032138_15040642.jpg]()
一般的な趣味撮影においては、動物園等の利用も適するが、
APS-C機でのフルサイズ換算最大750mmという焦点域は、
動物園には、やや過剰すぎるかも知れない。
動物園では、一般的に400ないし500mmの換算焦点距離
があれば十分だとも思う。
本レンズは、1990年代の旧モデル(AF200-400mm/f5.6
LD [IF] Model 75D)と比較し、格段に描写力が
高まっていて、旧モデルには無かった「SP」銘まで
冠するようにはなったのだが・・・ その結果として、
旧モデルの約2倍(69,800円→13万円)という価格の
上昇を招いてしまっていた。当初は、この値上げの
方針が気にいらず、相当長い期間、このレンズを無視
し続けていたのだが、2010年代に入って、ようやく
中古相場も下落、購入に値する、と踏んだ次第だ。
しかし、それでも約5万円の入手価格は、中古相場で
比較しても旧モデルの2倍程高値であったので、依然
コスパは良く無い。と思っていたのだが、さらに1年後
位に、NIKON Fマウント版で33,000円の価格の物を
見つけ、「ナンピン買い」(=相場が下がったものを
買い増して、平均取得単価を下げる措置)を行った、
これにより、平均した入手価格は4万円程度となり、
各々のレンズで既に数万枚程度は撮影しているので、
十分に元は取れていると判断している。
![_c0032138_15040603.jpg]()
そして、望遠端500mmが実用範囲の性能(詳しくは
後述するが、望遠端で解像力が低下する望遠ズームが
かなり多い)である長所とあいまって、遠距離の
ボート会場での撮影には、現在でも良く使っている。
α77Ⅱ(や、αフタケタ一眼レフ)に備わる、デジタル
テレコンと組み合わせる事で、最大1500mm相当の
画角が得られるからだ。なお、一応α機本体には手ブレ
補正機能が内蔵されている為、レンズ側の手ブレ補正は
不要であるが(注:元々入っていない)、1500mmもの
画角となると、手ブレ補正機能の有無とかを言う前に、
ファインダー内に被写体を捉えるフレーミングそのもの
が、ままならなくなってしまう。
もう、手持ちシステムとしての限界点が、そのあたりの
1500mm程度の焦点距離(注:利用者の技能に依存する。
実験により、自身の限界値を把握しておくのも良いだろう)
にある為、それ以上の長い望遠端焦点距離を持つズームは
不要と踏んでいる。
![_c0032138_15041446.jpg]()
ちなみに、本レンズの重量は約1200gと、500mm級
望遠ズームとしては、最も軽い類の仕様かも知れない。
手持ち超望遠撮影の用途があるのならば、現代では
さらに中古相場も下がっていると思われるのだが、
もう、古い時代のレンズなので、残念ながら入手性は
やや低い状況だ。
---
では、2本目の超望遠レンズ
![_c0032138_15041466.jpg]()
レンズ名:SIGMA 100-400mm/f5-6.3 DG OS HSM
| Contemporary
レンズ購入価格:68,000円(新古)
使用カメラ:CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)
2017年発売のAF超望遠ズームレンズ。
これもドラゴンボート競技撮影専用のレンズであるが、
現在においては、晴天時には、これがメインレンズと
なっている。
![_c0032138_15041499.jpg]()
なお、超望遠ズームレンズの場合、APS-C機で使うのは
基本中の基本であり、これをフルサイズ機で使って
しまうと、せっかくの超望遠画角が活かせない。
ドラゴン競技等を撮影に来るアマチュアカメラマンの
中には、超望遠(ズーム)に憧れて、買ったは良いが、
何も撮る被写体が無いので、こうしたイベントを撮影
に来る人が結構多い。
しかし、その多くが、ビギナーの富裕層だと思われ、
新鋭のフルサイズ機に、超望遠(400mm級または
600mm級)を装着している。
試しに「クロップして使ってますか?」と聞くと、
それもやっていない。
(=記録画素数が減るのが嫌だそうだ・・)
・・であれば、さほどの望遠画角は得られず、連写の速い
フルサイズ機も殆ど存在しない為、遠距離動体被写体を
撮る為のシステム的な組み合わせとしては「不適切」と
なってしまう。
本来、被写体の性質により、使用する機材は変えるべき
であるのだが、それが出来ないという事は、いくら
新鋭の機材で武装していたとしても、ビギナー層な
事が明白だ。
ましてや、天候等が変化しやすい屋外イベントである、
パラりとでも、にわか雨が降ろうものなら、そういう
ビギナーカメラマン達は、蜘蛛の子を散らすように
あっと言うまに撤収してしまう。
自慢の「虎の子」の機材を濡らしたく無いのであろうが、
元々、高級機で防塵・防滴などの天候耐性が高い機種を
使っている人達も多いし、あるいは、カメラを何処まで
濡らしたら壊れてしまうのか? とかいった経験則も
何も持っていないのであろう。
だから結局「雨が降ると撮れない」といった軟弱な
判断になってしまい、その点1つとって見ても、もう
完全なビギナーだ。
情けない状況ではあるのだが、それが世間一般の
大多数のレベルでもあるし、他の記事でも良く書くが、
現代においては新鋭機材を購入するのはビギナー層
ばかりである・・・
![_c0032138_15041405.jpg]()
さて、本レンズには、類似スペックのライバルレンズ
が存在している。それが後述のTAMRON 100-400mm
なのだが・・ それとの使い分けとして、本レンズの
場合は、レンズ先端部を摘んで引き出し、ズームリング
による回転操作の代用(=直進ズーム的用法)とする
事が出来る、これはメーカー推奨の利用法である。
この用法により、速やかなズーミング操作を可能と
する為、操作性と速写性が高まり、刻々と状況が変化
するスポーツ競技等の撮影には最適だ。
おまけに、重量もさして重たくは無く、1100g台に
留まっている事から・・ SIGMAでは、本レンズに
「ライト・バズーカ」のキャッチフレーズを付けている。
望遠レンズに憧れるビギナー層でも、なんとか取り回し
が出来る重量・サイズ感と、焦点域であるから、
意外な事にビギナー層からも高く評価されている模様だ。
何が意外か? と言えば、ビギナー層では、望遠レンズ
に憧れるものの、実用的にそれを使う被写体条件が
殆ど存在しない為、それらを常用して正しく評価できる
術(すべ)を全く持っていない。
本レンズよりもずっと重量級の、600mm級望遠ズームが
中古市場に極めて多数流通しているのは、その事が主な
原因だと思われる。要は、望遠に憧れて買ったは良いが、
撮るもの(被写体)が無く、かつ、大きく重い為に
持ち出すのも嫌になってしまうのだ、よって
初「使い道が無いし、もういらないよ」となって
中古市場に、それらが溢れている状況になっている。
![_c0032138_15042065.jpg]()
で、TAMRON版AF100-400mmとの比較の話だが、TAMRON版は「簡易防滴構造」となっている為、
それは雨天用として・・
本SIGMA版C100-400mmは、晴天時専用システム
として使い分けを行っている次第である。
まあ、本SIGMA版でも多少の雨は問題は無いと思うし、
実際に長年の間、雨天の撮影をこなしていて、防水機構
を持たないシステムでも、それらを壊さない状態で
やってこれたのではあるが、近年における異常気象は
本当に異常であり、想像を絶する程のゲリラ豪雨に
見舞われてしまった経験も、近年では何度かあるのだ。
そんな場合に、やはり少しでも天候耐性の強いシステム
を使っていれば、経験則との併用で、機材故障リスクを
大幅に減らせる訳である。
---
さて、3本目のレンズ
![_c0032138_15042078.jpg]()
レンズ名:TAMRON SP 70-300mm/f4-5.6 Di USD
(Model A005)
レンズ購入価格:19,000円(中古)
使用カメラ:SONY α65(APS-C機)
2010年にTAMRON創業60周年を記念して発売された、
高画質仕様望遠ズームレンズ。勿論フルサイズ対応だ。
![_c0032138_15042196.jpg]()
なお、このシステム(レンズとカメラの組み合わせ)
においては、私の場合、カメラのホールディング上、
指が痛くなってしまう。他のカメラで使う場合には
問題が無いし、他者で同一システムを組んでいる人に
聞いても問題が無いので、個人差の類であろう。
今回については、他機を重複使用しない為、このまま
のシステムで使用する事とする。
(参考:その、α65とSP70-300の組み合わせで
長期間使用している人が「最近、カメラの調子が悪い」
と言ってきた。機材を調べると、マウント部での接触
不良で撮影中にレンズ通信プロトコルがリセットされて
しまう模様。カメラ本体よりもレンズの方が重いので
ストラップで吊り下げた状態が長かったからであろう。
この状態で、わずかなガタつきが発生している。
マウント部のネジを締めなおし、電子接点に接点復活剤
を塗布する事で、無事直った模様だが、あまり安心は
できず、重量的アンバランスな機材システムの場合では、
機材各部に掛かる重量負担等も良く考慮する必要がある)
で、APS-C機での利用なので、フルサイズ換算画角は、
105mm-450mmとなる。
広角端の換算焦点距離が他の超望遠ズームよりも
短くなる為、比較的近距離までを継続して撮影する
必要のあるスポーツ競技等に向く。ドラゴン系競技
で言えば、観戦地点からボートまでの距離が近い、
河川等の(小規模)会場での撮影に向く画角範囲だ。
遠距離撮影の可能性がある場合、換算450mmでは、
やや物足りないケースもあるだろう。しかし本レンズ
では、望遠端+無限遠撮影の条件で解像感が低下する、
という弱点を持つ。
よって、大画素からのトリミングで対応するか、
あるいは、トリミングは後編集のコスト(時間や労力
といった手間)が、かかると判断される場合には、
SONY αフタケタ一眼レフに備わる、画質無劣化の
デジタル(スマート)テレコンバーター機能を用いれば、
仮想的にトリミングをしているのと、ほぼ等価となり、
望遠端の解像感の低さの弱点を回避する事ができたり、
後編集の手間を大幅に削減できる。(注:ただし、
テレコン使用時に、正確なフレーミングが出来る事、
という条件付きだ。揺れる超望遠域の撮影で、それは
意外に難しく、上級者クラスのスキルが必要となる)
なお、望遠端で解像力(解像感)が低下する現象は、
多くの(望遠)ズームレンズで発生する。
1980年代位までのMF望遠ズームでは、顕著であり、
1990年代位のAF望遠ズームでは、一部でいったん
その解決を見たのだが・・
2000年代から、デジタル対応高倍率ズームが出て
またそうした製品では、企画上の弊害で、それが
顕著となり(注:販売戦略上、できるだけ望遠域を
伸ばしたいから、無理をした設計になってしまう)
2010年代前後では、高倍率ズームの台頭で、各社の
望遠レンズは数が少なくなり、替わって超望遠ズーム
が普及するが、そこでも同様に望遠端を拡張する施策
を各社が取ってしまった為(望遠端が400mm→
500mm→600mmとなっていく)ここでも同様に、
望遠端を無理した設計仕様にせざるを得ない。
要は、ほとんどいつの時代の望遠・超望遠ズームで
あっても、消費者側が、より望遠である事を望んで
しまう為、無理をした仕様にしてしまい、たいてい
望遠端での解像感の低下などの現象を引き起こす。
そうならないように、実用範囲の性能水準で留めて
いる良心的な設計の望遠・超望遠ズームは、とても
種類が少ない。それにその事は、カタログスペック等
からは読み取れず、評価レビューを参考にしようと
しても、評価者がどのような撮影技法で、どのような
被写体を撮っているかに大きく左右され、かつ、
そうした微細な弱点を、評価者が見付けられなかったり、
あるいは、商品を販売する目的の専門評価記事の場合は、
そもそも、弱点を書く事が許されなかったりもする。
結局、弱点の情報は何処からも得る事が難しい為、
個々のレンズを入手し、自分の目で確かめてみるしか
無い状態なのだ。
しかし、本レンズの場合は、TAMRONの60周年を記念
する気合の入った設計であり、かつ高画質を表す
「SP」仕様のレンズでもある、そんなに軟弱な性能に
する筈も無いのだが、まあ、それでも気になるものは
気になる、という事だ。
![_c0032138_15042126.jpg]()
余談だが、本レンズの発売の頃、私はTAMRONの本社
を訪れて設計陣と対談する機会に恵まれた。色々な
名レンズ等の話で盛り上がっていたのだが、帰り際に
一人の技術者が近づいてきて、
技「今度出るSP70-300は、オススメです!」
と私に教えてくれた、相当にうるさい(汗)マニアだ
と思われていただろうが、そういう人に対しても
自信を持って推奨できる性能だと、開発側でも踏んで
いたのであろう。 私は、
匠「わかりました、いずれ購入します」
と言って、その場を辞したのだが、実際の購入は、
そこから7年も経った2017年頃になってしまった。
まあ、他にも超望遠ズームは色々と使っていたし、
それらよりも望遠端焦点距離が短い望遠ズームは、
必要性が少なかったのだ。
ただ、中古相場が2万円を切る程に安価になっていたし、
開発者じきじきの”お墨付き”もあった、そこで、
匠「小規模会場のイベント用に良いかな・・?」
と考えて、購入に至った次第である。
実際に様々なシチュエーションで使ってみると、
「望遠端+無限遠撮影」以外での、各焦点距離や距離域
での画質の劣化は認められず、さすがに、気合の入った
設計である事が、良くわかった。
惜しむらくは、マクロモードが無く、最短撮影距離が、
ズーム全域で1.5mと、平凡な性能である事だ、
この理由は、全域で高画質を維持する設計コンセプト
(設計要件、設計仕様、設計基準)があるならば、
近接撮影時に、諸収差が増大して画質が低下する事を
避ける為、近接撮影をある程度制限しているのであろう。
だが、広角端では、撮影倍率的に満足できない場合、
ここも、(画質的に)あまり使いたくない望遠端を
使わざるを得ない、結局、撮影距離や焦点距離に色々と
神経を使って撮影せざるを得ず、本レンズを中距離
スポーツ撮影用途以外の、例えば、屋外自然観察撮影
用途に用いる事は、少し控え目に考えている。
![_c0032138_15042920.jpg]()
総合的には悪いレンズでは無く、むしろ本決勝戦に
ノミネートされる程の優秀な望遠ズームではあるが、
細かい使いこなしは結構難しい、という事になる。
まあしかし、基本的には高描写力であるが故に、
中上級者層に向けては、かなり推奨できる望遠ズームだ。
---
では、4本目の超望遠システム
![_c0032138_15042997.jpg]()
レンズ名:TOKINA Reflex 300mm/f6.3 MF MACRO
レンズ購入価格:18,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のμ4/3機専用単焦点ミラー(レンズ)
換算600mm。電子接点にも対応しているので、DMC-GX7
等の手ブレ補正内蔵機との組み合わせでは、焦点距離を
入力不要で、そのまま内蔵手ブレ補正機能が使用可能だ。
![_c0032138_15042949.jpg]()
本レンズの主たる用途であるが、ほとんど「自然観察」
専用レンズとなっている。特に中遠距離の小さい被写体
までもターゲットとなりうる為、「トンボ専用レンズ」
と言っても差し支え無いであろう。
また、近接撮影に強い、という大きな利点があり、
最短撮影距離は80cmである。その際の最大撮影倍率は
1/2倍となり、さらにこれは多くのμ4/3機においては
デジタルズーム、デジタルテレコン等の併用により
等倍マクロ以上の撮影倍率が簡単に得られる。
これでますます、自然観察用途としての適正に優れる
事となる。
弱点は、ミラー(レンズ)なので、絞り機構を持たない
事である。すなわち被写界深度の調整とか、ミラーレンズ
では必ず出る「リングボケ」のコントローラビリティが
殆ど存在しない。
まあ、高度な撮影技法として、撮影距離を(長い方に)
変えていきながら、同じ被写体比率となるように、デジタル
ズームを連続的に掛けていけば、それで事実上、被写界深度
を深める効果が得られる。
しかし、これはかなり面倒な措置であるので、「ボケ質破綻
が我慢できない」とか「被写界深度が浅すぎて、被写体の
全体にピントが合わない」といった非常時以外では、私も
この技法を使う事は無い。
ただまあ、本ミラーは近接撮影が効き、被写界深度も
それなりに浅くなる(浅すぎる)場合もある為、最後の
手段として、この技法は覚えておく(練習しておく)のも
悪く無いであろう。
(原理さえわかってしまえば、技法そのものは、中級者
以上であれば、実践できると思われる。)
![_c0032138_15042951.jpg]()
本ミラー(レンズ)は、旧来のミラー(レンズ)と比べ、
様々な点で現代的なアドバンテージを持っている。
しかも価格が安価であり、コスパが極めて良い。
その結果として、ハイコスパ名玉編では、第12位に
ランクインしたミラー(レンズ)である。
μ4/3機ユーザーで遠距離撮影を志向するのであれば、
必携のミラー(レンズ)だと思う。
---
では、今回ラストのレンズ
![_c0032138_15043554.jpg]()
レンズ名:TAMRON 100-400mm/f4.5-6.3 Di VC USD
(Model A035)
レンズ購入価格:62,000円(新古)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
前述のSIGMA C100-400の完全な対抗馬として、2017年末に
発売されたAF超望遠ズームレンズ。
両者のスペックは、ほぼ同等で、描写力を含めて、殆ど同じ
性能だと思えば良いし、見た目やサイズ感も良く似ている。
これも勿論、ドラゴン系ボート競技撮影専用レンズだ。
![_c0032138_15043647.jpg]()
こちらのレンズは、簡易防滴構造となっていて、マウント部
にパッキンが入っている。
天候耐性が高いNIKON D500との組み合わせにおいては、
多少の雨でも問題が無い為、雨天、あるいは雨天になりそうな
予報が出ている際のイベント撮影では、こちらのシステムが
出動する事になる。
これも、SIGMA C100-400と並んで、現在のボート競技撮影
用の主力レンズとなっているが、上記の「天候」の要素に
より、どちらを使うかは明確に区分する事としている。
すなわちSIGMA C100-400は簡易防滴構造になっていない。
しかし、そちらでは「直進ズーム的用法」が可能な為、
迅速なズーミング操作性は優れている。
本TAMRON100-400でも、直進ズーム的用法は、出来ないと
言う訳では無いのだが、非推奨の使い方だし、そもそも
この動作が重く感じるので、あまりやりたく無い。
それと、冒頭のSP200-500と比較した場合、こちらには
「SP」銘が付いていないが、そういう風にメーカー側から
「高画質だ」(だからこれは高価なのだ)と押し付けられる
スタンスは個人的には好きでは無いので、「SP」銘については、
どうでも良い話だ。まあ、画質や製品の品質を評価するのは、
あくまで個々のユーザー側であり、メーカーや評論家や
他人の意見に左右される必要性は、まるで無い。
で、もし「自分ではわからない」と言うならば、そんな状態
では結局、どのレンズを買っても一緒では無いか・・
ビギナー層が、皆、高級機材(レンズ)を欲しがるという、
現代の風潮に問題がある訳で、少なくともレンズの画質とか、
カメラにおいても様々な性能評価が自分で出来るようになって
から、高級機材を買う事が本来であろう。
だがまあ、現代においては、カメラ・レンズ市場も、かなり
縮退してしまっていて、危機的状況だ。そういう状況下で、
良くわかっていないビギナー層が、巷の評判だけで新鋭機材を
買ってくれる事で、なんとか、メーカー側も流通側も事業が
成り立っている訳だから、むしろカメラ界全体からすれば
ビギナー層が腕に見合わない高級機材を買ってくれる事が
市場維持の為に、ずいぶんと助かっている状況だ。
故に、もう10数年程前くらいから、専門評価者等による
新製品レビュー等でも、新鋭機材の弱点等は一切書かなく
なってしまい、「新しい機材は常に良いものだ」と褒める
ような内容しか無くなってしまっている。(さも無いと、
評価者ですら、仕事が無くなってしまいかねない状況だ)
だからもう、そういう情報すら信用が出来ない訳であり、
ますます、ユーザー個々に自身の眼力や価値感覚に沿って
機材の良し悪しを決めていくしか無い、という状況だ。
![_c0032138_15043643.jpg]()
本TAMRON100-400の総括だが、悪いレンズでは無い。
現代的スペックで、実用価値が高い望遠ズームである。
前述のSIGMA100-400との選択は天候耐性で決定する
のが無難であろう。
あと、まだ発売から日が浅い現行商品の為、中古相場は
高値安定傾向である。後継の新型機でも出てきてくれて、
本レンズの相場が、3万円程度まで下がってくたならば
非常にコスパの良い実用(超)望遠ズームとなるのだが・・
----
さて、ここまでが記事本編。以下は今回の超望遠決勝戦
での順位発表である。
順位は、個人評価データベースでの「総合平均点」
とする。「特別加点」は、今回は無しとしよう。
1位:4.1点:TOKINA 300/6.3
2位:3.9点:TAMRON SP200-500
3位:3.7点:TAMRON SP70-300
4位:3.5点:SIGMA C100-400
5位:3.4点:TAMRON AF100-400
意外な事に、最強超望遠はTOKINAの300/6.3ミラー
(レンズ)となった。まあ、安価で高性能であり、
自然観察撮影全般に被写体汎用性が高いから、意外と
言うのも筋違いだろうか・・ 十分に有り得る話だ。
2位も意外に、TAMRON SP200-500の旧型レンズが
ランクイン、ただこちらは、現在においては入手性が
やや低い為、偶然見かけたならば購入対象にしても
良い、という感じであろうか・・
3位、SP70-300は妥当な所、気合の入った設計のレンズ
であり、微細な弱点以外は見当たらず、しかも中古相場
が安価である。初級中級層に向けては、本レンズが
ベストバイ(最も推奨できる超望遠ズーム)となるだろう。
ただし、フルサイズ機で使ってしまうと望遠端300mmは、
望遠域主体の撮影では物足りないケースも多々あると
思われるので、必ずAPS-C機で使う事を推奨しておく。
こうしておくと、画像周辺の収差が増える部分もカット
してしまえるので、高画質仕様という本レンズの長所を、
さらに強調する事ができるし、撮影倍率が低い(最短
撮影距離が長い)の不満も、少し解消する事ができる。
4位と5位の、各100-400は、これも意外な事に、あまり
評価点が伸びていない。まあ、現役バリバリで実用的に
使っている主力レンズではあるが、ボート競技の撮影、
という一般にあまり馴染みが無いジャンルに特化した
レンズである事も低評価の理由の1つとなっている。
いずれも新古品購入で、価格が若干高価であった事も
コスパ評価を下げている理由となっている。
年月が経ち、これらの中古相場が下落したのであれば、
両100-400mmレンズは、他の超望遠との評価点を
ひっくり返して、これらがツートップになると思われる。
---
では、これにて「超望遠選手権」記事は終了。
なお、超望遠レンズは5本しか持っていない事も無いので、
他のレンズはまた機会があれば、いずれ他記事でまとめて
紹介しよう。
次回の本シリーズ記事は、「広角選手権」となる予定だ。
それぞれの最強レンズを決定する、という主旨である。

距離が400mm以上の焦点域を含む、ズーム又は
単焦点レンズとしておく。
なお、銀塩時代のフルサイズ対応300mm単焦点レンズ
等は、当時の機材環境においてはやや珍しく、超望遠と
言えたかも知れないが、銀塩末期には望遠端300mmを
含むズームレンズも普及した為、300mm域は当たり前
の望遠焦点距離となっていた。
それ故にの「400mm以上」が「超望遠」の定義である。
この条件に当て嵌まるレンズは、多数所有してはいるが
古い時代のものは、ばっさりと割愛し、近代(およそ
2010年代前後)の物だけを決勝戦に「シード」として
エントリーする事としよう。
400mm級ズームが殆どとなるが、300mm域までで
最も性能が高いと思われるズームを1本、そしてμ4/3
専用の300mm単焦点レンズ(換算600mm)を加えて、
計5機種で、決勝戦を対戦する。
なお、惜しくもノミネートされなかったレンズ群は、
いずれも、ミラーレス・マニアックス、特殊レンズ、
等の旧記事でも紹介済みだ。そして、さらに機会が
あれば、そういう超望遠レンズ群を、また特集する。
---
まずは最初の決勝進出超望遠レンズ。

Di LD [IF] (Model A08)
レンズ購入価格:49,800円(中古)
使用カメラ:SONY α77Ⅱ(APS-C機)
2004年発売のAF超望遠ズームレンズ。
本レンズは、異マウントで2本所有している。
いずれもドラゴンボート競技撮影専用の業務用レンズ
として利用している。
内蔵手ブレ補正機能も、超音波モーターも搭載していない
やや古い時代のレンズではあるが、それ故に、過酷な
撮影環境(雨天、酷暑、水気、潮風等)においても
気兼ねなく使用できる「消耗用レンズ」である。

APS-C機でのフルサイズ換算最大750mmという焦点域は、
動物園には、やや過剰すぎるかも知れない。
動物園では、一般的に400ないし500mmの換算焦点距離
があれば十分だとも思う。
本レンズは、1990年代の旧モデル(AF200-400mm/f5.6
LD [IF] Model 75D)と比較し、格段に描写力が
高まっていて、旧モデルには無かった「SP」銘まで
冠するようにはなったのだが・・・ その結果として、
旧モデルの約2倍(69,800円→13万円)という価格の
上昇を招いてしまっていた。当初は、この値上げの
方針が気にいらず、相当長い期間、このレンズを無視
し続けていたのだが、2010年代に入って、ようやく
中古相場も下落、購入に値する、と踏んだ次第だ。
しかし、それでも約5万円の入手価格は、中古相場で
比較しても旧モデルの2倍程高値であったので、依然
コスパは良く無い。と思っていたのだが、さらに1年後
位に、NIKON Fマウント版で33,000円の価格の物を
見つけ、「ナンピン買い」(=相場が下がったものを
買い増して、平均取得単価を下げる措置)を行った、
これにより、平均した入手価格は4万円程度となり、
各々のレンズで既に数万枚程度は撮影しているので、
十分に元は取れていると判断している。

後述するが、望遠端で解像力が低下する望遠ズームが
かなり多い)である長所とあいまって、遠距離の
ボート会場での撮影には、現在でも良く使っている。
α77Ⅱ(や、αフタケタ一眼レフ)に備わる、デジタル
テレコンと組み合わせる事で、最大1500mm相当の
画角が得られるからだ。なお、一応α機本体には手ブレ
補正機能が内蔵されている為、レンズ側の手ブレ補正は
不要であるが(注:元々入っていない)、1500mmもの
画角となると、手ブレ補正機能の有無とかを言う前に、
ファインダー内に被写体を捉えるフレーミングそのもの
が、ままならなくなってしまう。
もう、手持ちシステムとしての限界点が、そのあたりの
1500mm程度の焦点距離(注:利用者の技能に依存する。
実験により、自身の限界値を把握しておくのも良いだろう)
にある為、それ以上の長い望遠端焦点距離を持つズームは
不要と踏んでいる。

望遠ズームとしては、最も軽い類の仕様かも知れない。
手持ち超望遠撮影の用途があるのならば、現代では
さらに中古相場も下がっていると思われるのだが、
もう、古い時代のレンズなので、残念ながら入手性は
やや低い状況だ。
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では、2本目の超望遠レンズ

| Contemporary
レンズ購入価格:68,000円(新古)
使用カメラ:CANON EOS 7D MarkⅡ(APS-C機)
2017年発売のAF超望遠ズームレンズ。
これもドラゴンボート競技撮影専用のレンズであるが、
現在においては、晴天時には、これがメインレンズと
なっている。

基本中の基本であり、これをフルサイズ機で使って
しまうと、せっかくの超望遠画角が活かせない。
ドラゴン競技等を撮影に来るアマチュアカメラマンの
中には、超望遠(ズーム)に憧れて、買ったは良いが、
何も撮る被写体が無いので、こうしたイベントを撮影
に来る人が結構多い。
しかし、その多くが、ビギナーの富裕層だと思われ、
新鋭のフルサイズ機に、超望遠(400mm級または
600mm級)を装着している。
試しに「クロップして使ってますか?」と聞くと、
それもやっていない。
(=記録画素数が減るのが嫌だそうだ・・)
・・であれば、さほどの望遠画角は得られず、連写の速い
フルサイズ機も殆ど存在しない為、遠距離動体被写体を
撮る為のシステム的な組み合わせとしては「不適切」と
なってしまう。
本来、被写体の性質により、使用する機材は変えるべき
であるのだが、それが出来ないという事は、いくら
新鋭の機材で武装していたとしても、ビギナー層な
事が明白だ。
ましてや、天候等が変化しやすい屋外イベントである、
パラりとでも、にわか雨が降ろうものなら、そういう
ビギナーカメラマン達は、蜘蛛の子を散らすように
あっと言うまに撤収してしまう。
自慢の「虎の子」の機材を濡らしたく無いのであろうが、
元々、高級機で防塵・防滴などの天候耐性が高い機種を
使っている人達も多いし、あるいは、カメラを何処まで
濡らしたら壊れてしまうのか? とかいった経験則も
何も持っていないのであろう。
だから結局「雨が降ると撮れない」といった軟弱な
判断になってしまい、その点1つとって見ても、もう
完全なビギナーだ。
情けない状況ではあるのだが、それが世間一般の
大多数のレベルでもあるし、他の記事でも良く書くが、
現代においては新鋭機材を購入するのはビギナー層
ばかりである・・・

が存在している。それが後述のTAMRON 100-400mm
なのだが・・ それとの使い分けとして、本レンズの
場合は、レンズ先端部を摘んで引き出し、ズームリング
による回転操作の代用(=直進ズーム的用法)とする
事が出来る、これはメーカー推奨の利用法である。
この用法により、速やかなズーミング操作を可能と
する為、操作性と速写性が高まり、刻々と状況が変化
するスポーツ競技等の撮影には最適だ。
おまけに、重量もさして重たくは無く、1100g台に
留まっている事から・・ SIGMAでは、本レンズに
「ライト・バズーカ」のキャッチフレーズを付けている。
望遠レンズに憧れるビギナー層でも、なんとか取り回し
が出来る重量・サイズ感と、焦点域であるから、
意外な事にビギナー層からも高く評価されている模様だ。
何が意外か? と言えば、ビギナー層では、望遠レンズ
に憧れるものの、実用的にそれを使う被写体条件が
殆ど存在しない為、それらを常用して正しく評価できる
術(すべ)を全く持っていない。
本レンズよりもずっと重量級の、600mm級望遠ズームが
中古市場に極めて多数流通しているのは、その事が主な
原因だと思われる。要は、望遠に憧れて買ったは良いが、
撮るもの(被写体)が無く、かつ、大きく重い為に
持ち出すのも嫌になってしまうのだ、よって
初「使い道が無いし、もういらないよ」となって
中古市場に、それらが溢れている状況になっている。

それは雨天用として・・
本SIGMA版C100-400mmは、晴天時専用システム
として使い分けを行っている次第である。
まあ、本SIGMA版でも多少の雨は問題は無いと思うし、
実際に長年の間、雨天の撮影をこなしていて、防水機構
を持たないシステムでも、それらを壊さない状態で
やってこれたのではあるが、近年における異常気象は
本当に異常であり、想像を絶する程のゲリラ豪雨に
見舞われてしまった経験も、近年では何度かあるのだ。
そんな場合に、やはり少しでも天候耐性の強いシステム
を使っていれば、経験則との併用で、機材故障リスクを
大幅に減らせる訳である。
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さて、3本目のレンズ

(Model A005)
レンズ購入価格:19,000円(中古)
使用カメラ:SONY α65(APS-C機)
2010年にTAMRON創業60周年を記念して発売された、
高画質仕様望遠ズームレンズ。勿論フルサイズ対応だ。

においては、私の場合、カメラのホールディング上、
指が痛くなってしまう。他のカメラで使う場合には
問題が無いし、他者で同一システムを組んでいる人に
聞いても問題が無いので、個人差の類であろう。
今回については、他機を重複使用しない為、このまま
のシステムで使用する事とする。
(参考:その、α65とSP70-300の組み合わせで
長期間使用している人が「最近、カメラの調子が悪い」
と言ってきた。機材を調べると、マウント部での接触
不良で撮影中にレンズ通信プロトコルがリセットされて
しまう模様。カメラ本体よりもレンズの方が重いので
ストラップで吊り下げた状態が長かったからであろう。
この状態で、わずかなガタつきが発生している。
マウント部のネジを締めなおし、電子接点に接点復活剤
を塗布する事で、無事直った模様だが、あまり安心は
できず、重量的アンバランスな機材システムの場合では、
機材各部に掛かる重量負担等も良く考慮する必要がある)
で、APS-C機での利用なので、フルサイズ換算画角は、
105mm-450mmとなる。
広角端の換算焦点距離が他の超望遠ズームよりも
短くなる為、比較的近距離までを継続して撮影する
必要のあるスポーツ競技等に向く。ドラゴン系競技
で言えば、観戦地点からボートまでの距離が近い、
河川等の(小規模)会場での撮影に向く画角範囲だ。
遠距離撮影の可能性がある場合、換算450mmでは、
やや物足りないケースもあるだろう。しかし本レンズ
では、望遠端+無限遠撮影の条件で解像感が低下する、
という弱点を持つ。
よって、大画素からのトリミングで対応するか、
あるいは、トリミングは後編集のコスト(時間や労力
といった手間)が、かかると判断される場合には、
SONY αフタケタ一眼レフに備わる、画質無劣化の
デジタル(スマート)テレコンバーター機能を用いれば、
仮想的にトリミングをしているのと、ほぼ等価となり、
望遠端の解像感の低さの弱点を回避する事ができたり、
後編集の手間を大幅に削減できる。(注:ただし、
テレコン使用時に、正確なフレーミングが出来る事、
という条件付きだ。揺れる超望遠域の撮影で、それは
意外に難しく、上級者クラスのスキルが必要となる)
なお、望遠端で解像力(解像感)が低下する現象は、
多くの(望遠)ズームレンズで発生する。
1980年代位までのMF望遠ズームでは、顕著であり、
1990年代位のAF望遠ズームでは、一部でいったん
その解決を見たのだが・・
2000年代から、デジタル対応高倍率ズームが出て
またそうした製品では、企画上の弊害で、それが
顕著となり(注:販売戦略上、できるだけ望遠域を
伸ばしたいから、無理をした設計になってしまう)
2010年代前後では、高倍率ズームの台頭で、各社の
望遠レンズは数が少なくなり、替わって超望遠ズーム
が普及するが、そこでも同様に望遠端を拡張する施策
を各社が取ってしまった為(望遠端が400mm→
500mm→600mmとなっていく)ここでも同様に、
望遠端を無理した設計仕様にせざるを得ない。
要は、ほとんどいつの時代の望遠・超望遠ズームで
あっても、消費者側が、より望遠である事を望んで
しまう為、無理をした仕様にしてしまい、たいてい
望遠端での解像感の低下などの現象を引き起こす。
そうならないように、実用範囲の性能水準で留めて
いる良心的な設計の望遠・超望遠ズームは、とても
種類が少ない。それにその事は、カタログスペック等
からは読み取れず、評価レビューを参考にしようと
しても、評価者がどのような撮影技法で、どのような
被写体を撮っているかに大きく左右され、かつ、
そうした微細な弱点を、評価者が見付けられなかったり、
あるいは、商品を販売する目的の専門評価記事の場合は、
そもそも、弱点を書く事が許されなかったりもする。
結局、弱点の情報は何処からも得る事が難しい為、
個々のレンズを入手し、自分の目で確かめてみるしか
無い状態なのだ。
しかし、本レンズの場合は、TAMRONの60周年を記念
する気合の入った設計であり、かつ高画質を表す
「SP」仕様のレンズでもある、そんなに軟弱な性能に
する筈も無いのだが、まあ、それでも気になるものは
気になる、という事だ。

を訪れて設計陣と対談する機会に恵まれた。色々な
名レンズ等の話で盛り上がっていたのだが、帰り際に
一人の技術者が近づいてきて、
技「今度出るSP70-300は、オススメです!」
と私に教えてくれた、相当にうるさい(汗)マニアだ
と思われていただろうが、そういう人に対しても
自信を持って推奨できる性能だと、開発側でも踏んで
いたのであろう。 私は、
匠「わかりました、いずれ購入します」
と言って、その場を辞したのだが、実際の購入は、
そこから7年も経った2017年頃になってしまった。
まあ、他にも超望遠ズームは色々と使っていたし、
それらよりも望遠端焦点距離が短い望遠ズームは、
必要性が少なかったのだ。
ただ、中古相場が2万円を切る程に安価になっていたし、
開発者じきじきの”お墨付き”もあった、そこで、
匠「小規模会場のイベント用に良いかな・・?」
と考えて、購入に至った次第である。
実際に様々なシチュエーションで使ってみると、
「望遠端+無限遠撮影」以外での、各焦点距離や距離域
での画質の劣化は認められず、さすがに、気合の入った
設計である事が、良くわかった。
惜しむらくは、マクロモードが無く、最短撮影距離が、
ズーム全域で1.5mと、平凡な性能である事だ、
この理由は、全域で高画質を維持する設計コンセプト
(設計要件、設計仕様、設計基準)があるならば、
近接撮影時に、諸収差が増大して画質が低下する事を
避ける為、近接撮影をある程度制限しているのであろう。
だが、広角端では、撮影倍率的に満足できない場合、
ここも、(画質的に)あまり使いたくない望遠端を
使わざるを得ない、結局、撮影距離や焦点距離に色々と
神経を使って撮影せざるを得ず、本レンズを中距離
スポーツ撮影用途以外の、例えば、屋外自然観察撮影
用途に用いる事は、少し控え目に考えている。

ノミネートされる程の優秀な望遠ズームではあるが、
細かい使いこなしは結構難しい、という事になる。
まあしかし、基本的には高描写力であるが故に、
中上級者層に向けては、かなり推奨できる望遠ズームだ。
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では、4本目の超望遠システム

レンズ購入価格:18,000円(中古)
使用カメラ:PANASONIC DMC-GX7 (μ4/3機)
2012年発売のμ4/3機専用単焦点ミラー(レンズ)
換算600mm。電子接点にも対応しているので、DMC-GX7
等の手ブレ補正内蔵機との組み合わせでは、焦点距離を
入力不要で、そのまま内蔵手ブレ補正機能が使用可能だ。

専用レンズとなっている。特に中遠距離の小さい被写体
までもターゲットとなりうる為、「トンボ専用レンズ」
と言っても差し支え無いであろう。
また、近接撮影に強い、という大きな利点があり、
最短撮影距離は80cmである。その際の最大撮影倍率は
1/2倍となり、さらにこれは多くのμ4/3機においては
デジタルズーム、デジタルテレコン等の併用により
等倍マクロ以上の撮影倍率が簡単に得られる。
これでますます、自然観察用途としての適正に優れる
事となる。
弱点は、ミラー(レンズ)なので、絞り機構を持たない
事である。すなわち被写界深度の調整とか、ミラーレンズ
では必ず出る「リングボケ」のコントローラビリティが
殆ど存在しない。
まあ、高度な撮影技法として、撮影距離を(長い方に)
変えていきながら、同じ被写体比率となるように、デジタル
ズームを連続的に掛けていけば、それで事実上、被写界深度
を深める効果が得られる。
しかし、これはかなり面倒な措置であるので、「ボケ質破綻
が我慢できない」とか「被写界深度が浅すぎて、被写体の
全体にピントが合わない」といった非常時以外では、私も
この技法を使う事は無い。
ただまあ、本ミラーは近接撮影が効き、被写界深度も
それなりに浅くなる(浅すぎる)場合もある為、最後の
手段として、この技法は覚えておく(練習しておく)のも
悪く無いであろう。
(原理さえわかってしまえば、技法そのものは、中級者
以上であれば、実践できると思われる。)

様々な点で現代的なアドバンテージを持っている。
しかも価格が安価であり、コスパが極めて良い。
その結果として、ハイコスパ名玉編では、第12位に
ランクインしたミラー(レンズ)である。
μ4/3機ユーザーで遠距離撮影を志向するのであれば、
必携のミラー(レンズ)だと思う。
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では、今回ラストのレンズ

(Model A035)
レンズ購入価格:62,000円(新古)
使用カメラ:NIKON D500(APS-C機)
前述のSIGMA C100-400の完全な対抗馬として、2017年末に
発売されたAF超望遠ズームレンズ。
両者のスペックは、ほぼ同等で、描写力を含めて、殆ど同じ
性能だと思えば良いし、見た目やサイズ感も良く似ている。
これも勿論、ドラゴン系ボート競技撮影専用レンズだ。

にパッキンが入っている。
天候耐性が高いNIKON D500との組み合わせにおいては、
多少の雨でも問題が無い為、雨天、あるいは雨天になりそうな
予報が出ている際のイベント撮影では、こちらのシステムが
出動する事になる。
これも、SIGMA C100-400と並んで、現在のボート競技撮影
用の主力レンズとなっているが、上記の「天候」の要素に
より、どちらを使うかは明確に区分する事としている。
すなわちSIGMA C100-400は簡易防滴構造になっていない。
しかし、そちらでは「直進ズーム的用法」が可能な為、
迅速なズーミング操作性は優れている。
本TAMRON100-400でも、直進ズーム的用法は、出来ないと
言う訳では無いのだが、非推奨の使い方だし、そもそも
この動作が重く感じるので、あまりやりたく無い。
それと、冒頭のSP200-500と比較した場合、こちらには
「SP」銘が付いていないが、そういう風にメーカー側から
「高画質だ」(だからこれは高価なのだ)と押し付けられる
スタンスは個人的には好きでは無いので、「SP」銘については、
どうでも良い話だ。まあ、画質や製品の品質を評価するのは、
あくまで個々のユーザー側であり、メーカーや評論家や
他人の意見に左右される必要性は、まるで無い。
で、もし「自分ではわからない」と言うならば、そんな状態
では結局、どのレンズを買っても一緒では無いか・・
ビギナー層が、皆、高級機材(レンズ)を欲しがるという、
現代の風潮に問題がある訳で、少なくともレンズの画質とか、
カメラにおいても様々な性能評価が自分で出来るようになって
から、高級機材を買う事が本来であろう。
だがまあ、現代においては、カメラ・レンズ市場も、かなり
縮退してしまっていて、危機的状況だ。そういう状況下で、
良くわかっていないビギナー層が、巷の評判だけで新鋭機材を
買ってくれる事で、なんとか、メーカー側も流通側も事業が
成り立っている訳だから、むしろカメラ界全体からすれば
ビギナー層が腕に見合わない高級機材を買ってくれる事が
市場維持の為に、ずいぶんと助かっている状況だ。
故に、もう10数年程前くらいから、専門評価者等による
新製品レビュー等でも、新鋭機材の弱点等は一切書かなく
なってしまい、「新しい機材は常に良いものだ」と褒める
ような内容しか無くなってしまっている。(さも無いと、
評価者ですら、仕事が無くなってしまいかねない状況だ)
だからもう、そういう情報すら信用が出来ない訳であり、
ますます、ユーザー個々に自身の眼力や価値感覚に沿って
機材の良し悪しを決めていくしか無い、という状況だ。

現代的スペックで、実用価値が高い望遠ズームである。
前述のSIGMA100-400との選択は天候耐性で決定する
のが無難であろう。
あと、まだ発売から日が浅い現行商品の為、中古相場は
高値安定傾向である。後継の新型機でも出てきてくれて、
本レンズの相場が、3万円程度まで下がってくたならば
非常にコスパの良い実用(超)望遠ズームとなるのだが・・
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さて、ここまでが記事本編。以下は今回の超望遠決勝戦
での順位発表である。
順位は、個人評価データベースでの「総合平均点」
とする。「特別加点」は、今回は無しとしよう。
1位:4.1点:TOKINA 300/6.3
2位:3.9点:TAMRON SP200-500
3位:3.7点:TAMRON SP70-300
4位:3.5点:SIGMA C100-400
5位:3.4点:TAMRON AF100-400
意外な事に、最強超望遠はTOKINAの300/6.3ミラー
(レンズ)となった。まあ、安価で高性能であり、
自然観察撮影全般に被写体汎用性が高いから、意外と
言うのも筋違いだろうか・・ 十分に有り得る話だ。
2位も意外に、TAMRON SP200-500の旧型レンズが
ランクイン、ただこちらは、現在においては入手性が
やや低い為、偶然見かけたならば購入対象にしても
良い、という感じであろうか・・
3位、SP70-300は妥当な所、気合の入った設計のレンズ
であり、微細な弱点以外は見当たらず、しかも中古相場
が安価である。初級中級層に向けては、本レンズが
ベストバイ(最も推奨できる超望遠ズーム)となるだろう。
ただし、フルサイズ機で使ってしまうと望遠端300mmは、
望遠域主体の撮影では物足りないケースも多々あると
思われるので、必ずAPS-C機で使う事を推奨しておく。
こうしておくと、画像周辺の収差が増える部分もカット
してしまえるので、高画質仕様という本レンズの長所を、
さらに強調する事ができるし、撮影倍率が低い(最短
撮影距離が長い)の不満も、少し解消する事ができる。
4位と5位の、各100-400は、これも意外な事に、あまり
評価点が伸びていない。まあ、現役バリバリで実用的に
使っている主力レンズではあるが、ボート競技の撮影、
という一般にあまり馴染みが無いジャンルに特化した
レンズである事も低評価の理由の1つとなっている。
いずれも新古品購入で、価格が若干高価であった事も
コスパ評価を下げている理由となっている。
年月が経ち、これらの中古相場が下落したのであれば、
両100-400mmレンズは、他の超望遠との評価点を
ひっくり返して、これらがツートップになると思われる。
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では、これにて「超望遠選手権」記事は終了。
なお、超望遠レンズは5本しか持っていない事も無いので、
他のレンズはまた機会があれば、いずれ他記事でまとめて
紹介しよう。
次回の本シリーズ記事は、「広角選手権」となる予定だ。