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【玄人専科】匠の写真用語辞典(4)~操作性・操作系

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一般的なカメラユーザー層には普及していない「特殊用語」
や「本ブログ独自の用語」を解説する、上級者または上級
マニア向けのシリーズ記事。
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今回第4回目記事は「操作性・操作系」編という事で、
それに係わる用語を説明する。では早速始めよう。

----
<操作性・操作系>

★操作子
 一般用語、ただし世間一般的には、カメラでの厳密な定義は
 殆ど存在していないので、ここで詳しく定義する。

 まず「操作子」とはカメラにおける、様々な設定操作を行う為
 の物であり、具体的には、スイッチ(ボタン)、各種ダイヤル、
 レバー、二次元操作子等がある。
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 *スイッチとは、ON/OFFの2つの状態を切り替える物。
  「ボタン」と呼ぶ場合もある。
  例えば、電源スイッチ、AF/AEロック、Fnボタン等
  また、スイッチを押しながらダイヤルを廻す場合も
  操作子としてはここに含める(例:ISO感度変更用ボタン)
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 *ダイヤルとは、回転する操作子であり、アナログダイヤルと
  デジタルダイヤルがある。

  ・アナログダイヤル=機能が固定されていて、その状態を示す
      指標が存在する。
      例えば一部のカメラにある「露出補正専用ダイヤル」
      通常は回転は有限だが、「露出モードダイヤル」や
      銀塩時代の「シャッター速度設定ダイヤル」のように
      無限に回る物もある。
     (一般には、単に「ダイヤル」と呼ばれる)

  ・デジタルダイヤル=指標が無く、無限に回転する。
      ダイヤルの機能を変更する事もできる。
      例えば一般的なカメラの前後ダイヤル。
     (「電子ダイヤル」と呼ばれる事が多い)

  また広い意味では、レンズのピントリングやズームリングも
  回転する「ダイヤル」の一種と見なせるであろう。

 *レバーとは、複数段階の固定的な機能を切り替えて使う物。
  例えば、ドライブモード変更レバー、測光パターン切り替え
  レバー等。

 *二次元操作子とは、上下左右の方向に対して、連続または
  不連続に状態や値を選択できる物。その機能は問わない。
  これが「マルチコントローラー」等と呼ばれる場合には、
  PCにおけるマウスのように必要に応じてメニュー位置変更
  等の様々な異なる機能を割り振れるようにもなっている。
  例えば「AF測距点選択」「メニューの選択」「コンパネの
  項目選択」「再生画像送り」などに使われている。

 これら以外にも「十字キー」があるが、これはその機能により、
 スイッチの一種か、又は二次元操作子の代用として使われるので、
 適宜それらに分類する。(注:キーとは、様々な異なる意味を
 持つが、操作での概念としては、指で押さえて操作を行う物で、
 鍵盤楽器(キーボード)や、PCのキーボードが代表的だ)
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 また、背面モニターを使った「タッチパネル」も操作子として
 分類できると思われるが、本ブログでは「EVF搭載機等での
 タッチパネル操作は推奨していない」(第2回記事参照)
 ので、この操作子は、申し訳無いが無視する事としよう。

 あるいは現在のカメラでは搭載されていないが、近い将来には、
 音声認識技術を用いた、音声操作子が加わるかもしれない。

 それから、メーターやディスプレイは「表示装置」であるので
 操作子の範疇には含まない。

★操作性と操作系
 本ブログ独自の用語、一般的に浸透している概念とは異なる。

 本ブログでは、基本的に「操作性」と「操作系」は異なる概念
 として定義しており、簡単に言えば以下となる。

 操作性=操作子(前述)の、位置、感触、使い易さ等

 操作系=撮影状況に応じて、必要なカメラ設定機能を速やかに
     呼び出し、速やかに変更できる為のUI設計。
     操作全体が有機的に連携が取れているか否かが重要。
     
 ちなみに、UIとは「ユーザー・インターフェース」の略、
 GUIとは、グラフィカルUIであり、どちらもPC等の世界では
 一般的な用語な為、ここでの詳細説明は割愛する。
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 さて、「操作性」と「操作系」において、いくつかさらに
 細分化して説明しよう。

 *MFレンズの「操作性」とは
  ・ピントリングの太さ、位置、トルク(廻す重さ)、回転角
  ・絞り値クリック解除機構(動画用)の有無と切り替え方式
  ・絞り環の位置や廻しやすさ等
  (注:カメラを含めた重心やバランスも影響が強いが、
   ここではその説明は省略する)

 *AFレンズの「操作性」とは
  ・MFへの切り替え方式
  ・MF時のピントリングの位置や廻しやすさ(トルク、回転角)
  ・無限回転式ピントリングか否か?
  ・絞り環の有無、有る場合はその使いやすさ
  ・絞り値ロック機構の有無(P露出モード時用等)
  ・手ブレ補正モードの切り替え方式
  ・IF(インナーフォーカス)か否か。
  ・撮影距離範囲の切り替えの有無や方式
  ・機能スイッチ(フォーカス・ホールド等)の有無と位置
  
 *ズームレンズ(AF/MF)の「操作性」とは
  ・ズーミング方式(回転式、直進式)
  ・ズーミングで全長が可変するか否か
  ・パワーズームか手動ズームか?
  ・マクロモードの有無やその切り替え方式
  ・ズーミング時のトルク(重さ)、回転角
  ・ズーム(焦点距離)ロック機構の有無
  ・ズームリングとピントリングの位置関係
 
 *カメラ本体の「操作性」とは
  ・スイッチ、ダイヤル、レバー、二次元操作子などの
   配置、押しやすさ、感触、ロック機構の有無等
  ・連続または同時に行われる操作での、カメラ保持状態
  (例:スイッチを押しながらダイヤルを廻すと
   カメラを持つ手指が足りない、持ちきれない等)

 *カメラ本体の「操作系」とは 
  ・メニュー構造(階層化、カスタマイズ性)
  ・使用頻度を意識した操作子の配置や連携動作
  ・操作子のカスタマイズの自由度、その方法、その表示
  ・連続または同時に行われる操作での、指動線への配慮
  ・操作子を「押しながら」か、「押すたびに」か、あるいは
   そのタイマー機能等の仕様や方法論
  ・Fn(ファンクション)スイッチ等に割り振れる機能の
   種類、そしてそれらが連続量の場合は、他の操作子と
   どう連携するか、あるいは連続や同時操作がやりやすいか
  ・操作子の機能が静的(固定)か動的(可変)か、
   動的操作子の場合は、その変化が合理的か否か
  ・全般的に、必要な時に必要な設定手法が速やかに呼び出せ、
   それを速やかに変更できるか否か
  ・背面モニター上に表示された各種設定機能を二次元操作子
   やダイヤルを組み合わせた簡易な操作でエディットできる、
  「コンパネ(コントロール・パネル)」機能があるか

 となる。
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 しかし、「操作系」の概念が必要となってきたのは比較的近年
 の機材からだ。具体的には銀塩時代のカメラであれば、機能が
 増えてきたAF一眼レフ末期(1990年代後半以降)からであり、
 そこから続くデジタル一眼レフの時代でも勿論そうである。

 それ以前の時代のMF銀塩機等では、「操作系」の概念は
 不要で、単に「操作性」だけを考えておけば良かったのだ。
 カメラの長い歴史を見れば、操作系という概念は、つい最近と、
 言えるかも知れず、この概念の進歩が全然進んでいないのも、
 設計側であまり意識しないのも、評論家等が評価出来ないのも、
 ユーザー層が殆ど理解できていないのも、ある意味やむを
 得ない。

 そして、そもそも、何故「操作系」が優れていないとならない
 のか?すら余り理解されていない。これは勿論、コンマ1秒
 でも早く写真を撮る為であり、重要な「撮影機会」を逃さない
 為だ、業務撮影はもとより、趣味撮影でもこれは必須要件だ。

「操作系」の概念が、なかなか一般化しないのは、まずは、
 作る側として、カメラを使って写真を撮る経験度が極めて高く、
 かつ様々な機能を使う事に精通していないと、設計そのものが
 困難であるからだ。
 で、設計のみならず、ユーザーあるいは評価者も同様であり、
 現在の超多機能化したカメラで、それら全てに精通するのは
 たとえ専門家であっても困難だ。
 つまり、殆ど誰も、操作系の良し悪しを理解や評価する事が
 出来ない状態だ。

 また、市場は常に新機種に新機能(高スペック)を要求する為
 増えすぎた機能を制御(設定操作)する為の操作系概念設計が
 どうしても遅れてくる。

 さて、ここでシンプルな具体例を上げる、
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 銀塩AF一眼レフの傑作機、MINOLTA α-7(2000年)は、
 優秀な設計チームや外部スタッフ等により、「操作系」を
 徹底的に磨きあげた銀塩最強のカメラであった。

 しかし、デジタル時代に入り、このα-7の操作子(操作性)を
 ほぼそっくりコピーして作ったKONICA MINOTA α-7 Digital
 では、銀塩時代とデジタル時代では必要な操作が異なっていた為
(例:デジタルではWB調整やISO感度の調整が必須等、色々)
 それらの新機能を、どの操作子で、いつ、どのように設定する
 のが良いか?という「操作系」の概念が、まだ誰もデジタル
 撮影のノウハウが無かった為、ちぐはぐな操作系を持つカメラ
 となってしまった。(デジタル一眼第3回記事参照)
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 別の例だが、オリンパスのミラーレス機(2009年~)は
 初期の段階では「スーパーコンパネ」の操作系が、なかなか
 優れていたのだが、2010年代後半以降、新機種での新機能が
 増えすぎていて、それを旧来の「スーパーコンパネ」には
 入れる事ができず、はみ出し、若干の矛盾まで生じて、
 結果的に操作系を悪化させてしまった事例もある。

 なお、私が認める操作系に優れたカメラは数える程しか無く
 2000年 MINOLTA α-7(銀塩一眼レフ第29回記事、予定)
 2008年 PANASONIC DMC-G1(ミラーレス機第1回記事)
 2012年 SONY NEX-7(ミラーレス機第8回記事)
 2017年 PENTAX KP(デジタル一眼レフ第21回記事、予定)
 のみである。

 ただ、これらのカメラでも完璧な操作系とは言い難い面もあるが
 他機が殆ど全滅状態なので、これらでも相当に優れた方である。
 なお、次点となる機種もいくつかあるが、割愛する。

★アナログダイヤル
 独自用語。一般的には、単に「ダイヤル」と呼ばれる事もある。

 前述の通り、回転するダイヤルに割り振られた機能が固定されて
 いて、その状態を示す指標が存在する物と定義する。
 普通は「有限回転式」となっているが例外もある。
c0032138_20230889.jpg
 例えば、カメラ本体においては、専用露出補正ダイヤル、
 露出モードダイヤル(ユーザー設定モード含む)、そして
 一部のデジタルカメラにある専用ISO感度設定ダイヤル。
 銀塩機等にあるシャッター速度変更ダイヤル、銀塩機用
 ISO(ASA)変更ダイヤル等である。
 それから、ファインダー用視度補正ダイヤルもまあ、この
 一種かも知れない。

 さらにレンズ側で言えば、絞り環、そしてピントリングも
 言わばアナログダイヤルだ。

 では、以下、その長所と短所を述べる。

 *アナログダイヤルの長所
  ・ダイヤルを見ただけで設定値が視認できる
  ・電源を切っても、設定値がずっと残っている(不揮発性)
  ・電源OFF時にも設定操作が可能
  ・指の感触などで操作がし易い

 *アナログダイヤルの短所
  ・デジタルダイヤルと併用する際、値に矛盾が出るため
   通常はこのダイヤルでしか操作が出来なくなる。
  (例:NIKON DfやFUJI X-T1のISO感度や露出補正ダイヤルは、
   そのダイヤルでしか値の設定が出来ず不便だ。
   ただし、SONY α7系の露出補正ダイヤルは、それが±0の
   値になっている場合のみ、デジタルダイヤルで別途
   露出補正値の設定が可能となる優れた操作系だ。
   また、FUJI X-Pro2等は、露出補正ダイヤルにC位置があり
   ここにセットすればデジタルダイヤルで露出補正が効く)

  ・ロック機構があるとお話にならない
   ダイヤルでしか設定ができないのに、一々ロック機構を
   外さないと使えない残念な機種がNIKON DfやFUJI X-T1だ。

   ちなみに、OM-D等のOLYMPUS機では露出モードダイヤルの
   ロックのON/OFFを機械式に切り替えれる優れた仕様だ。
   またFUJI X-T2等も、ISO感度ダイヤル等が同様の構造に
   なり、X-T1からの改善が見られる。
c0032138_20230843.jpg
  ・連続量、あるいは極めて細かい多数のステップのある設定
   要素変更が迅速に行えない。
  (具体的には、ISO感度がISO50からISO160万まであるとか
   シャッター速度が16秒から1/8000秒まで等、非常に沢山の
   設定値がある場合等)

  ・設定値の変更幅(ステップ)を容易には変更できない。
  (例、シャッター速度ダイヤルや露出補正ダイヤルを
   1段,1/2段,1/3段ステップ等に切り替える事が困難である。
   この問題に対応した例も、MINOLA α-7,CONTAX N1,
   NIKON Df等があるが、細かくなるので詳細は割愛する)

 まあ、アナログダイヤルの長所短所はそんな感じだ。
 基本的には、短所の4つの問題に何らかの対策がなされて
 いればアナログダイヤルによる「操作性」は悪く無いが、
「操作系」まで考慮するとなると、その設計は高度で困難だ。
(例:いちいちカメラの構えを解いて操作する必要がある等)

 なお、近年のPENTAX KP(2017)に存在する「機能ダイヤル」は
 機能がアサイナブル(変更可能)なアナログダイヤルであり
 専用のデジタルダイヤルと組み合わせて用いる(以下写真)
 まあ、アナログとデジタルのハイブリッドと言えるであろう。
c0032138_20233217.jpg
(注:PENTAX K-1/K-1 MarkⅡにも機能ダイヤルが存在するが
 それらは固定機能であり「アサイナブル」では無い)

★デジタルダイヤル
 独自用語。一般的には「電子ダイヤル」と呼ばれる事もある。

 前述の通り、このダイヤルには指標が無く、無限に回転する。
 また、ダイヤルにアサインされる(=割り振られた)機能を
 変更する事もできる。

 具体例としては、一般的なデジタルカメラの前後ダイヤル
(メイン/サブ電子ダイヤルと呼ばれる場合もある)がある。
 また、PENTAXの機能ダイヤルと対応する「設定ダイヤル」も
 デジタルダイヤルの一種であり、さらに言えば、
 近年の超音波モーター搭載の一眼レフ用AFレンズや、
 ミラーレス機専用AFレンズにおける、AFとMFのシームレス
(=継ぎ目の無い)切り替えを実現する無限回転式の
 ピントリングも、デジタルダイヤルの一種だと言える。
(注:一部のレンズでは、無限回転式ピントリングながら、
 距離指標を持ち、その区間だけ有限動作のハイブリッド型も
 NIKONやTAMRONレンズ等で見受けられる)
c0032138_20233275.jpg
 さて、デジタルダイヤルの長所短所だが、

 *デジタルダイヤルの長所
  ・設定値を電子的に記憶(セーブ)でき、それを任意に
   呼び出す事(ロード)ができる、その際、ダイヤルには
   指標が無いので、見た目と実際の設定値に矛盾が起きない
  ・絶対値が異なる複数の設定値変更に対応できる
  (例をあげれば、開放F値1.4のレンズを、開放F4のレンズ
   に交換したとしても、絞り変更ダイヤルは、そのままの
   位置で両者の異なる数値に対応できる)
  ・アサインされる機能や、回転方向を変更する事ができる
  ・連続量あるいは多数の設定値のある制御に向き、かつ
   その変化幅(ステップ、段数等)を設定できる。
  ・簡易ロック機構が実現できる
  (例:FUJIFILM X-T1等では、プログラムシフトを行う際
   デジタルダイヤルを廻しても、すぐには効かず、
   数回廻してから、初めてこれが効くようになる)

 *デジタルダイヤルの短所
  ・指標が無く、見た目ではその値がわからない
  ・電源OFF時には操作が出来ない
  ・手指の感触だけで操作が出来ない。
   特に、無限回転式ピントリングでは、MF時の操作性が
   壊滅的に酷くなり、実用に全く適さない
  ・不連続量(離散量)の設定(選択)に向かない
  (具体的には、”はい、いいえ”等の2者選択等の際に、
   ダイヤルを余計に廻してしまう場合がある。
   例として、以前SONY機でエフェクトの選択をダイヤルで
   行った際、OFF位置に入れるつもりが、動作が重く遅れて
   1つ余分に回って特殊なエフェクトがかかったままになり、
   それがわかりにくく、続く撮影が全てエフェクトONと
   なってしまった事がある(汗)
   さらに悪い例としては、CANON初期のデジタル一眼レフ
   では画像の消去時に”消去、キャンセル、全消去”の
   3つのメニューが出てきて、これをダイヤルで選ぶので
   間違って全消去を選んだら(一応確認メニューが出るが)
   大変である。
   このように、基本的には不連続量の選択には向かない)
  ・可変ステップ制御ができない
  (これはまあ、多くのカメラの場合のみの問題だが、
   例えば、PCや家電製品、電子楽器等では、押し続けたり、
   廻し続けると、その変化量がどんどん大きく、早く
   なっていくUIが存在している=例:ビデオの早送り等
   おおざっぱでも良い設定の場合、この操作系は有効だが
   カメラでそれを実現した例はあまり無く、初期の銀塩
   AF機等のシャッター速度変更等で見られる程度だ)

 デジタルダイヤルの長所短所は以上のような感じだ。

 ここでは、デジタルダイヤルの長所である「設定値の矛盾が
 出ない事」そして「連続量の制御」に、どのような機能を
 割り振るべきか?が、UI(操作系)設計での鍵となるだろう。
c0032138_20233289.jpg
 他に単純な例を挙げれば、連写速度をダイヤルで変更できる
 ような機能があれば、動体撮影時に極めて有効なのだが・・
(注:PETAX KP等の機能ダイヤルで、連写速度変更が出来るが、
 残念ながら、連写中ではダイヤルを廻しても変わらない。
 また、他機では、これを実現した例は無いと思う)

 こうした事は、ごく簡単な事だとは思うが、前述のように
 設計側でも、どんな機能がどんな時に必要かの操作系設計の
 概念が未発達のままなのであろう。

 写真を撮る暇も無い位に忙しいであろうデジタル機の開発
 エンジニア(技師)に、それを考えろ、というのは困難かも
 知れないが、そうであれば、UI設計検討チームを別途作るとか、
 デジタルに精通している社外アドバイザーを入れて意見を聞く
 とか(注:銀塩時代からの専門家では新規概念はまず無理だ)
、そういう風に、抜本的な対策を行わないかぎり、操作系の
 改善は難しいかも知れない。

★動的UI
 専門的な要素が高い独自用語。

 この項目の定義であるが、通常のUI(操作系)では、
 例えば、ボタンやダイヤル等の操作子は、特定の機能に
 予め(デフォルトで)割り振られているか、又はユーザーが
 機能をカスタマイズ(変更)して、例えば「Fnボタンに
 アサイン」(割り当て)をする。

 つまり、ユーザーがカスタマイズするか否かは別として、
 あるボタンを押せば、常にその同じ機能が呼び出される。
 このような通常型のインターフェース(操作系)を、
「動かない、固定的」という意味から、本ブログでは
 静的(スタティック)(ユーザー)インターフェース
 =静的UI、と呼ぶ事がある。

 ちなみに、Wi-FiとかUSBなどの他機器との連携用の機構は
「物理的(フィジカルな)インターフェース」であり、非常に
 広義な呼び方をすれば「I/O」(入出力)の一種である。
 これの事を「UI」(ユーザーインターフェース)と書くのは
 大きな誤りである(実際に、そう間違っている例がある)

(注:さらなる詳細で、ネットワーク等の専門技術分野では、
 イーサネット等のコネクタやドライバを「物理インターフェース」
 と呼び、そのアドレスやポート設定、トンネル設定などを
「論理(仮想)インターフェース」と呼ぶ)

 いずれにしても「インターフェース」という技術用語自身に
「他機器との接続」という意味があったとしても、UIに関しては、
 機械の操作の為に人間が介在する物であり、昔の時代では
「MMI」(マンマシン・インターフェース」とも呼ばれていた。
 UIでの「操作系」と、物理的な接続機構(インターフェース)
 を混同してはならない。
c0032138_20233199.jpg
 動的UIに対し、動的(ダイナミック)UIは、ボタンやダイヤル
 といった操作子や、表示装置(メーターやディスプレイ)に
 割り振られている機能が固定されておらず、状況に応じて、
 自動的(あるいは能動的に)に機能が変更される。
 ただ、何がどこまで変化すれば、動的UIと呼べるか?という
「程度」の点は、きちんと定義していない。
c0032138_20233154.jpg
 前述の「操作系が優れている4つのカメラ」には、
 その程度はともかく、全て「動的UI」が搭載されている。

 具体的には、 
 2000年 MINOLTA α-7では、
 ・AEロックボタンを押すと、その時点では分割測光は、もう
  不要なので自動的にスポット測光に切り替わり、露出メーター
  上に分割測光との差分値が表示され(メータードマニュアル)
  さらにDISPボタンが、14分割露光分布表示の開始ボタンに
  自動で切り替わる等(他にも様々あり)

 2008年 PANASONIC DMC-G1では
 ・絞り値設定用ダイヤルは、MFレンズをアダプターで
  使った際には不要となるので、自動的に露出補正ダイヤル
  に切り替わる。加えて、十字キー上のAFモード切り替え
  スイッチが自動的にMF拡大表示開始スイッチになる等。
c0032138_20233114.jpg
 2012年 SONY NEX-7では
 ・上部の2つのデジタルダイヤルと背面の1つのダイヤルによる
 「トライ(=3)ダイヤル」は、ナビゲーション・ボタン
  により、ユーザーが予め決めた3ダイヤルの機能セットを
  必要な状況に合わせて次々に呼び出す事ができる。
  その機能セットにより、各ダイヤルの機能は変化する。
  加えて、メニューボタン等が通常アサインされている2つの
 「ソフトキー」は状況に応じて、OK、キャンセル等の選択操作
  ボタンに自動的に切り替わる(他にも色々有り)

 2017年 PENTAX KPでは
 ・機能ダイヤルにユーザーが最大3つの機能をアサインし
  それをまず変更すると、それに対応する設定ダイヤルで
  呼び出した機能の設定値を変更できる。
  また、グリーンボタンはHyper操作系での露出モードに応じて、
  プログラムライン設定や、マニュアルシフト開始等に
  自動的に機能(効能)が変更される等、色々。

 この「動的UI」は、非常に効率的なカメラ設定操作を可能と
 する「操作系」である。しかし、いずれも難解で高度であり、
 これを使いこなすにはユーザー側での高いスキルを要求される。
 初級中級者層はもとより、上級者や専門家層でも理解が困難かも
 知れない。なので、基本的にこのような高度な操作系は世間
 一般的にも、まず正当に評価される事は無い。

 まあ「使い難い、わかりにくい」という評価が普通であろう。
 操作系設計としては極めて優れているのに、残念な話だ。
「操作系」が発達しないのは作る(開発)側の問題のみならず、
 こういう高度な操作系が殆ど理解できないユーザー側にも
 多大な問題があるのかもしれない。
(だから、NEX-7の後継機のα7では、高度な動的UIを廃し、
 安易な静的UIにダウングレードされてしまったのか・・)

★ISO感度直接変更
 独自では無いが、あまり一般的では無い用語。

 すなわち、ISO感度がいつでも(常時)直接変更できる
 機能や機構を持つ機種の事だ。

 デジタル時代初期(2000年代)のカメラ(一眼、コンパクト)
 は、ISO感度の変化可能幅が小さく、かつ高感度はノイジー、
 そしてAUTO ISOは、あまり高感度になるとノイズが出る事を
 嫌ってか、可変範囲が非常に狭かった。
 勿論、ISO感度設定は手ブレ限界速度(別記事で後述)の
 保持にも多大な影響がある。

 この為、この時代の古いデジタル機を使う際は、ISO感度の
 頻繁な手動変更が必要となる。ところが、この時代ではまだ
 操作系の概念が全く未発達であり、ISO感度変更は、専用
 ボタンを押してからダイヤルを廻して設定するか、または
 メニューの中からISO感度変更を選んで設定するしかなかった。
 ましてや、ファインダーを覗きながらのISO変更など、絶対に
 無理であり、これをダイヤル等に割り振って直接的にISO感度
 を変更できるカメラを熱望していた。

 しかし、その機能を持つ一眼レフは2000年代には発売されず
 例外的に、PENTAXのハイパー操作系でのSVモードの際に
(K10D等で)それが実現できた程度だ(しかし、不十分)
c0032138_20233229.jpg
 2010年代(またはやや前)から、やっとISO直接変更が
 出来るデジタル機が出始めている。
 具体的には、
 RICOH GXR,SONY NEX-7系/α7系,NIKON Df,FUJIFILM X-T1系
 PENTAXのハイパー操作系搭載機のSVモード時(例:K10D,K-5)
 PENTAXで機能ダイヤルを持つ機種(例:KP)
 アサイナブルダイヤルにISO感度を割りふれるコンパクト機 
(例:FUJIFILM XQ1)あたりだけだ。
(注:これらの系列機も同様に可能だ)

 私はISO感度直接変更が可能なカメラを熱望していたので、
 上記の、それが出来る機種群は全て所有している。というか
 機種選定(購入)時の重要な条件がISO直接変更であったのだ。

 しかしながら、2010年代中頃以降の機種はいずれも超高感度
 を搭載している、上記機種群の中では、NIKON DfがISO20万、
 PENTAX KPがISO80万もあり、両機種ともAUTO ISOのままで
 その最高感度に到達できる。
 であれば、もう実際の所では、頻繁なISO直接変更など
 殆ど不要となってしまった・・
(ただし、AUTO ISO切り替わりシャッター速度(低速限界)を
 調整できる機能が入っている事が必須となるだろう)

 まあ、超高感度機を買うのであれば、もはやこのISO直接変更
 の必要度は、かなり減っていると思うが、ここは参考まで・・

★取扱説明書
 一般用語。

 冊子あるいはPDFのカメラ取扱説明書を読む事は必須である。
 基本的な機能、その操作、そして全体の仕様等は当然だが、
 様々な「制限事項」(例外事項)は最も知りたい事だ。
 
 これは、何かの機能を使う時に生じる制限であり、例えば
 SONYのデジタル一眼レフで超高速連写(連続撮影優先AE)
 を用いると、絞りが開放のままになる、等であるが、
 上記は有名だが、他機や他社機でも細かい制限事項が存在する
 場合が多々ある、例えば連写モードではフラッシュが焚けない
 とか超解像拡大が効かない、とか色々とある。撮影中にそれが
 起こると原因不明で混乱するので、それを細かく知りたい訳だ。
 
 だが、これらの「制限事項」が取扱説明書に殆ど書かれて
 いない場合が多い。まあ、わざわざ「カメラの弱点」は
 書き難いのかも知れないのだが、それにしても不親切で
 あると思う。

---
さて、今回の「操作性・操作系編」は、このあたり迄で・・
次回記事は「画像編(1)」となる。


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