安価な中古ミラーレス機にマニアックなレンズを装着し、
コスパの良いアダプター遊びを楽しむシリーズ、第64弾。
今回は、まず、このシステムから。

カメラは、LUMIX DMC-GX7
レンズは、SAMYANG 85mm/f1.4 AS IF UMC
韓国SAMYANG(サムヤン)製の、大口径MF中望遠レンズ、
フルサイズ対応で、2010年から国内販売を開始している。
マウントは(デジタル)一眼レフ用である、まあ、本レンズは
サムヤン初期の製品であり、2000年代の設計・製造と思われ、
まだミラーレス機用マウント版は無かった。
ただし、本家サムヤンのHPによると、SONY E, FUJI X,μ4/3
版が追加されている模様だし、近年発売された他の焦点距離
のレンズでも、ミラーレス機用がある、
サムヤンは、本レンズ発売以前も、韓国でCCTVレンズ
(監視カメラや産業用レンズ)を製造していた模様である、
昔から写真用レンズを手掛けていたかどうかは良くわからないが、
2010年以降、精力的に様々な特徴的な仕様の(例10mm/f2.8
や24mm/f1.4)レンズを多数リリースしている。
ちなみに、その全てがMF絞込み測光レンズであり、AFレンズは
ラインナップされていない。
最大の特徴は価格が安価な事だ。まあ、近年の特殊仕様レンズは
そこそこ価格が高いものもあるが、本85mm/f1.4に関しては
発売時の定価が約3万円であった。(その後も税率変更程度で
値上げはしていない)
さて、僅か3万円の85mm/f1.4 果たして写るのか・・?

レンズ型番の意味だが、
ASは、アスフェリカルで非球面レンズを使用しているという意味
IFは、インターナル・フォーカス、つまりピント合わせでレンズ
の全長が変化しない、という意味
UMCは、ウルトラ・マルチ・コーティングという意味の模様で、
例えばPENTAX のSMCとかと同様であろう。
まあ、要は高性能である事を謳っているのだが、しかし、
85mm/f1.4は激戦区だ、古今東西、ほぼ全ての85mm/f1.4
が優秀なレンズである事は間違い無い。
だが、基本的に85mm/f1.4は高価なレンズである、
本レンズの新品価格3万円は、あらゆる85mm/f1.4レンズ
の中古価格より安価だ。
そうした状況で考慮しなければならない事は、やはりコスパ
であろう。値段相応なのか、お買い得なのか、そのあたりの
見極めが大事だと思う。

重要な「ボケ質」であるが、ボケ質破綻が発生する場合がある、
まあ、その点を言えば、85mm/f1.4の代表格とも言える(RTS)
プラナー85/1.4のボケ質破綻は有名であり、他の85/1.4でも
同様にボケ質破綻が出るので、本レンズだけの問題では無い。
ちなみに、他の多くのレンズは、ボケ質破綻の為に絞りを
使う場合、絞り込んでボケ質が綺麗になる所を探すが、
85/1.4等の大口径レンズにおいては、絞りを開けて背景を
大ボケさせてボケ質破綻を回避する手段もある。
絞り羽根は、8枚の準円形絞りである、絞りのクリック
ストップは1/2段刻みであり、f1.4から、f1.7,f2,f2.5
あたりまでは比較的円形に近い形になるが中間絞りより
絞るとちょと形がいびつな感じだ。
ちなみに、ボケ質破綻と絞り羽根の形状はあまり関係が無い、
世間では円形絞りである事を重要なポイントとしている模様だが
円形絞りであるメリットは、木漏れ日など、背景に光源がボケて
出やすい状態で、かつ、僅かに絞った状態で初めて絞り形状の
影響が出る訳だ、そういうのはあまり多いケースでは無いと
思うし、いざとなれば、どんなレンズでも絞りを開放で使えば
完全な円形絞りとなる。だからまあ極端に言えば絞り羽根の
形状などどうでもよい。むしろ気になるのは絞り羽根の枚数の
方であり、フーリエ級数という数学的原理から、絞り羽根は
「奇数」枚数の方が光条などが細かく出る、その点からすると
8枚絞り羽根は、ちょっと気になる仕様だ。
(他社の85/1.4の多くは、9枚絞り羽根だ)
そして、ボケ質というのは、MF/AF/デジタル一眼レフや、
純正AFレンズを用いた一部のミラーレス機では、開放測光となり
よって、撮影前にボケ質が確認しずらかった。なので、従来は
ボケ質が破綻する、という事実は余り撮影前にはわからなかったし、
結局、撮影後に銀磯ならば現像したりデジタルならPCで見るまで、
わからなかった。つまり、ボケ質やその破綻の理由の因果関係も
あまり知られていなかったと思われる。
ミラーレス機でマウントアダプターでMF/AFレンズを使う段になって、
初めてボケ質の破綻が撮影前に明確に確認できるようになった。
何故ならばミラーレス機は絞り込み測光であり、従来の一眼では
絞り込むとファインダーに映る光量も減って、そのあたりがちゃんと
確認できなかったのだ。
ミラーレス機では絞り込んでもモニターやEVFに映る光量は
減らないし、EVFの解像度が上がってきた近年になって、やっと
ボケ質の破綻も撮影前にわかるようになってきたのだ。
で、SAMYANG 85/1.4のボケ質だが、まあ85mm/f1.4に
しては平凡、という感じであろうか。
次いで、本レンズの最短撮影距離は、1mである。
これは85mmレンズとしては、ちょっと標準より劣る性能だ。

まあしかし、今回は、μ4/3機のGX7に装着しているので、
見かけ上の撮影倍率も上がり、そのあたりはあまり不満は無い。
そして本レンズには絞り環が存在する。
本レンズは、CANON EF(EOS)マウント版であるが、電子接点が
存在しないため、EFやα(A)マウントでもボディ側から絞りを
制御する事はできない。けど、ミラーレス機で使う上では
この仕様はむしろ歓迎だ。EFやαの機械絞りアダプターでは
連続変化なので、絞り値の感覚がわかりにくく、かつ絞り値の
再現性が無い(例えば、先ほどf5.6で撮ったら、今回も同じ絞り値
にしたい、と思っても、指標が無いので同じ絞り値にできない)
一見、何も問題なさそうに見える本レンズであるが、最大の問題
は逆光性能の低さだ。
画面にちょっと光源が入ると、盛大なフレアとゴーストが発生する。
これは現代のレンズでは、むしろ珍しい逆光性能の低さだ。
一応フードが付属しているが、今回はわざと装着していない、
けど、この逆光性能の低さであれば必須であろう。
だが、フードだけでそうした弱点が改善する訳でも無いので、
よほど注意する必要があると思われる。

これは半逆光状態だ、ここで少しでもアングルを変えて、
太陽光源が入ると、画面内に大きなゴーストが発生する。
ゴーストは絞りの形が出る、とか言う可愛らしいものではなくて、
画面の1/4程度に「ドーッン」と大きな縞が入る事もある。
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さて、価格に見合うかどうか?という話であった。
弱点は、MFである事、逆光耐性が弱い、ボケ質破綻
長所は、新品価格が3万円と安価、絞り環がある事
私がこれまで買った約10本の85mm/f1.4級レンズの価格帯は、
中古4~5万円と、中古・新品で8~14万円との、2つの価格帯
に分かれていた。10万円クラスは、高価だから性能が良いか?
というと、そういう事は全くなく、低価格帯ものと同等か、
下手すると性能の落ちるものも多々あった。
すると、85mm/f1.4で適正な入手価格は、4万円台というのが
目安になると思う。
本レンズは新品で3万円だ、まあ、それならばコスパは良い、
と結論づけておこう。
ちなみに、85mm/f1.4の全てのレンズの問題点だが、ピント
歩留まりが非常に悪い事だ。なにせ被写界深度が数cmしか無い、
被写体も撮影者も完全に静止できるブツ撮りとかの状態であれば
まだしも、一般的に被写体も撮影者も自由に動く状態において、
AFだろうがMFだろうが、ピントが合う確率は10%以下であろう。
つまり、10枚に9枚は失敗写真となる、そして技術を高めても
回避できない。1cmも動かない被写体なんて有り得ないからだ。
なので「絶対にその瞬間を撮らなければならない撮影」では
85mm/f1.4は怖くて、とても使えないレンズとなる。
使える状況は、例えば人物撮影で1000枚撮って、そのうち
10枚だけ選べば良い、という撮影ならば、まあ使えるであろう、
けど、あまりに効率が悪い事は否めない。
85mm/f1.4は、そういう感覚で選ぶレンズである、という事だ。
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さて、次のシステム。

カメラは、LUMIX DMC-G1
レンズは、ミノルタ AF28mm/f2である。
1980年代後半の、AF一眼(α)用レンズだ。
初期型であるので、例によってピントリングが極めて狭い。
そして、例の(汗) 28mm/f2 長焦点型レンズだ。
長焦点とは、あまり一般的なカメラ用語では無いが、レンズの
焦点距離よりも、レンズ全長が長いタイプの場合の呼び名である。
例の、と書いたのは、この長焦点型28mm/f2は、性能的に
課題を抱える「鬼門」レンズが殆どだからだ。

撮影当日はあいにくの雨天。
しかし、それはむしろ助かる、というのも、低性能なレンズで
あると、逆光耐性が極めて弱いものが殆どだからだ。
こうした低コントラストのフラット光では、よほど酷いレンズ
か、またはレンズに水滴がついていなければ、フレアやゴースト
は発生しにくい。
で、これまで紹介した28mm/f2だが、
第24回、MINOLTA MC 28mm/f2
第35回、PENTAX SMC 28mm/f2
第36回、CANON New FD 28mm/f2
上の2本は、長焦点型であり、正直お話にならない性能。
下の1本は、長焦点型ではなく、記憶では良いレンズであったが
先日使用した際は、フレアに悩まされ、カビや故障を疑った。
本レンズは、MC28/2と同じミノルタ製、MC28/2は1970年代の
レンズであり、その後MD版になった際も同じレンズ構成であった。
もし1980年代の本レンズが、それらと同じであれば、ちょっと
困った状態なのだが・・
幸いにして、αのレンズとしてAF化した際、本レンズは僅かに
レンズ構成が変化している模様。
旧タイプの長焦点28mm/f2より、若干マシという感じであろうか。

最短撮影距離は30cmと標準的。
ボケ量は、所詮は広角レンズなので、f2と言ってもあまり大きくは
無い、まあ、最短が20cmかそれ以下であれば多大なボケ量を
得られる広角マクロとなるが、本レンズは、そういう性格のレンズ
ではなく、開放f値が一般的なf2.8級よりも、たった1段明るい
だけのレンズである。
暗所での広角撮影に向いているという感じであろう。
つまり、今日のような雨天の撮影とかだ。
まあでも、今回使用のカメラはDMC-G1だ、μ4/3機なので、
換算画角は56mm相当と広角では無いし、それはともかく、
G1の最高ISO感度は3200しか無い。近代のミラーレス機で
あれば、もっと高いISO感度は当たり前なので、そういう意味
では本レンズの特徴を活かせない。
ただ、これが銀塩時代であれば、ISO100程度のフィルム
では、f2はやはり大きな性能であった。
銀塩時代に28mm広角を使った場合、一般的な技術を持つ
撮影者の手ブレ限界は1/30秒、上級者で1/15秒であろう。
仮に f2.8級レンズでその状態である場合、上級者で無いと
撮れない1/15秒の時、f2ならば1/30秒で余裕で撮れる訳だ。

今回は雨天なので、あまりちゃんとしたチェックが出来ていない
けど、感触からすると、MC28/2やSMC(P)28/2よりも、多少は
まともなレンズであると思われる。
ただ、長所はあまり無いし、感動的という要素も全く無い。
本レンズの中古購入価格だが、1990年代に18000円であった、
むしろMFの28/2より安価であったのが驚くべき点だ、
つまり、言ってしまえば、MFの28/2はコスパ的には論外、
本レンズは、ぎりぎりセーフという感じのコスパであろう。
現代において必要なレンズでは無い、極論すれば銀塩時代の
長焦点型広角を見つけたら、一切手を出さないのが賢明だと思う、
一般的に高価であるし、コスパは極めて悪い。
値段が高いから良いレンズだという幻想は持たないのがベターだ。
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さて、次のシステム。

カメラは、PENTAX K-01 AF/MF性能にいずれも致命的
課題を持つ、但し、レンズの選択により若干だが弱点が緩和
できる場合もある。
ということで、レンズは、FA43mm/f1.9 Limitedだ。
第1回記事で紹介しているので再登場となる。
1990年代後半のAF一眼用レンズ、極めて高性能な逸品だ。
本レンズの出自については、第1回記事はもとより様々な記事で
紹介している、ともかく、一つのエポックメイキング的なレンズ
である。

本日は雨天であるが、本レンズの写りは天候にかかわらず
不満は無い、逆光耐性はあるし、ボケ質は概ね良好である。
本レンズの描写力が衝撃的であったのは、1990年代末の話だ、
その後約20年が経過している。その間、多数の凄いレンズも
発売されているので、本レンズの鮮烈さは薄まってしまった。
最初の衝撃は、本レンズ(1997年)の、ほんの数年後
(2000年)のFA77mm/f1.8 Limited の発売であった、
「ナナナナを買わずして何を買う」というのが、本シリーズ記事
での、FA77/1.8への最大の賛辞であるが、その衝撃は発売から
16年たった現在でも薄れていない。
じゃあ、FA43/1.9Limitedは、3日(3年)天下か?と言えば
まあ、ある意味そうなのかも知れない、ナナナナが無ければ
FA43の私の評価はもっと高かったかも知れないし、FA31/1.8
もまた、そうである(こちらは決して悪いレンズでは無いが、
高価であったので、私のコスパ評価は酷いものである)

ところで、43mmという焦点距離には意味がある。
√(36x36+24x24) ≒43 この計算は、35mm判フィルム
(またはフルサイズ撮像素子)の対角線長だ、一説によると、
標準レンズというものは、50mmというのでは長すぎ、
43mmが正しいという話を聞く、50mmを標準にしたのは、
ライカ社が(半端な数字を避け)便宜上50mmを標準レンズとした、
との事である。
PENTAXは、昔からこうした一般的な(と言うか、ライカの決めた)
28mm,35mm,50mm,75mm,90mm.135mmといった
焦点距離の系列に反発していた節がある。
例として、MF銀塩時代の30,40.105,120.150mmレンズ
そしてAF銀塩時代の、31.43(本レンズ),77mmレンズ
デジタル時代には焦点距離の統一感はかなり薄れたが
それでも、55,70mm等他社に無いユニ-クな焦点距離の
レンズを発売している。
で、本FA43/1.9の最短撮影距離は、45cmと標準的である。

さて、ここでちょっと気になる点が発生。
ここで画面左上の木漏れ日ボケの形は、絞りの値によって
大きく変化する、本レンズの絞り羽根の枚数は8枚であり
冒頭のサムヤン85/1.4と同じで、形状も似ている。
サムヤンなら「円形絞り」と呼ぶ所かもしれないが、しかし
この中間絞り(f2.8位)での背景ボケの絞り形状は極めて汚い。
加えて「口径食」も発生するので、画面周囲のボケは少し
半月状に歪んでいく。
ちなみに、これは「ボケ質破綻」とは関係無い、単に光源ボケの
形状が悪いだけだ、安直に回避しようとすれば、絞りを開放に
してしまえば良いだけだ。
で、問題はこのボケ形状の話ではなく、この状況は、K-01では
撮影前にはモニターで確認出来ない事だ。
つまり、K-01は特殊なKマウントミラーレス機であるとは言え、
純正またはKAf対応のAFレンズであれば、一眼レフと同様の
開放測光である(他のミラーレス機でも、純正レンズならば同様
に開放測光の場合が多い)
こうした開放測光では、撮影時に絞り込んだ際の、被写界深度
およびボケ質は撮影前にはわからない。
この為、カメラには「プレビュー」機能というものがあり、
そのボタンを押して、絞り込んだ際の画像を確認する。
だが、K-01には専用のプレビューボタンが存在しないのだ、
取扱説明書によると、ボディ上部の緑または赤のボタンに、
プレビューをアサインして使う模様だ。
だが、これらのボタンは、K-01の特徴である「エフェクト母艦」
としての用途の為に、それらの機能に既に割り振ってある。
よって、プレビューは出来ない、という事になる。エフェクトの
操作系を犠牲にするか、プレビューを犠牲にするかは微妙な
選択だが、私の感覚ではK-01は「エフェクト母艦」であるから、
それを犠牲にしたく無い。
以下はエフェクトをかけた写真である。

なお、以前の記事で、リコーXRだったか、PENTAX Mだったか、
電子接点の無いKマウントレンズをK-01では使用できない
(絞りが開放のまま)と書いたが、PENTAXの初期のデジタル
一眼(*istDsや、K-10D等)では、プレビュー操作を行いながら
シャッターを切ることで、面倒ながらも、M型(P,XRも同様)の
レンズでも絞り込んで撮影ができた、K-01でもこのプレビュー
操作でM型のレンズを絞れるかと思って、試しにアサインしてみた
のだが、残念ながら、やはりKAf対応レンズで無いと、プレビュー
操作が出来ない模様だ。つまり、M型レンズはK-01では使えない。
また、K-01は、そこまで本格的な撮影の用途に適したカメラでは
無い、だからプレビュー機能もボタンにはアサインしたく無い。
この状況であったら、FA43/1.9等の純正レンズであっても、
NEX-7とか他社ミラーレス機で使った方が良いのではなかろうか?
K-01のAFは精度不足でどうせ合わないし、NEX-7等であれば、
優秀なEVFとピーキング機能で、被写界深度(ボケ量)や
ボケ質(光源ボケ形状や、ボケ質破綻など)を撮影前に
絞りを変えながら確認できる。
まあ、K-01の問題はさておき、FA43/1.9は本物だ。
PENTAXユーザー必携レンズと言っても良いかも知れない。
本レンズの購入価格は、1990年代後半に中古で4万円程度。
その後2000年代には、中古相場は3万円台後半まで下落、
しかしその後、じわじわと上昇、2016年現在では中古相場は
5万円前後となっている。
しかし、相場上昇は、これが良いレンズであるからという訳でも
K-1の発売でフルサイズレンズが人気であるという理由でも無い。
単純な事で、定価が値上げしたからだ。
ご存知のように、PENTAXは、本レンズ発売時には独立企業で
あったのだが、2000年代以降にオーナー企業が2度も変わっている、
最初にHOYAの傘下となり、現在はRICOHの傘下となっているのだ。
そのたびに従来の製品群の価格は値上げし、オープン価格と
なっているので定価はよくわからないが、本レンズの発売時の
65000円という価格より相当上がっている事であろう。
それが中古相場に連動して、中古価格が引き上げられているのだ。
この事実をどう見るかはユーザーの判断次第だ、20年近くにも
なるロングセラーであるから、丁寧に中古を探せば従来の相場
と同じ4万円以下というものも見つかるかも知れない・・
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さて、次は今回ラストのシステム。

カメラは、SONY NEX-7
レンズは、PENTAX Super Takumar 105mm/f2.8
1960年代のMF中望遠レンズ、マウントはM42である。
詳しい情報はわからないが、単層コーディングであろう。
(SMCでは無いという事だ)
50年も前の、かなり古いレンズだ、写りはどうか?
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単層(モノ)コーティングという話だが、レンズ構成が4群5枚と
シンプルなので描写力の低下はあまり問題にはならない。
100mm級の単層レンズというと、第54回記事のCANON
FD100/2.8、第24回記事のNIKONシリーズE 100/2.8等
があるが、いずれも大変良く写るレンズであった。
本写真では、デジタルズームを3倍程度かけているが、
ここではボケ質もさほど悪くない。
飛んでいる被写体が面白くなってきたので、MF操作の練習がてら
そういうのを狙ってみよう。

クマ蜂はさすがに被写体が小さいので難しい、また、空中に静止
していたかと思うと、気まぐれにスーッと移動してしまう。
デジタルズーム倍率を2~3倍にしているのだが、非常に速やかな
MF操作が要求される、10枚や20枚は失敗覚悟であろう。
この時の背景ボケ質は汚く、すなわち破綻している。
だが、ここで絞りまで調整する余裕は全く無い、それも含めて
操作の練習にはなると言えばなるのだが・・
ともかく、ボケ質破綻の発生するレンズであるという事だ。
逆光耐性も高くないが、まあ、古いレンズなのでしかたが無い。

こちらはデジタルズームで4倍以上程度、このあたりから
輪郭線のパキパキ感がはじまり、ズーム倍率としては実用限界だ。
フレア感も強いが、これは撮影アングル次第だ。
まあでも、105mmレンズはAPS-C機で約160mm相当、
デジタルズーム併用で160-640mm/f2.8の望遠として使える
ので、この手の飛びモノ撮影には、なかなか楽しいレンズだ。
画質はFD100/2.8やシリーズE100/2.8には及ばないが、
それらより本レンズの方が設計が古いのでやむを得ないだろう。
最短撮影距離は1.2mと、もう少しだけ寄れて欲しい。
しかし、その点についても、今回はヘリコイド内蔵アダプター
を用いているので、最短はかなり縮めることが可能で、マクロ
レンズ的な用途にもなる。

写真の被写体はかなり小さいが、ヘリコイド・アダプターの威力
が発揮される。
なんの変哲もないオールドの単焦点望遠レンズが、デジタル
ズームで大口径超望遠になったり、中望遠マクロにもなる。
このあたりは、ミラーレス機の恩恵であろう、デジタル一眼レフ
では、なかなかこういう遊び要素の大きい撮影はできない。
画質については、気になるならばもっと良いレンズを使えば良いし、
このような古い昔の、現代では性能的にちょっと使えそうも無い
ジャンク行き寸前のレンズが、ここまで楽しく撮影できるという
事が、むしろ重要なのではなかろうか?
本レンズの中古購入価格だが、2010年代に3000円であった。
ジャンク扱いの商品である、さすがに外観はくたびれていたが、
レンズは綺麗なもので、撮影には何ら問題はなかった。
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余談だが、クマ蜂を撮っている時、あっちこっちにカメラを向けて
いたら、犬の散歩に来た年配のオジサンが声をかけて来た、
オ「何を撮られているのですか?」と
私は「クマンバチですよ、動き廻るので難しいです」
その時、私が手にしていたシステムが、奇妙なものばかりで
あったので、オジサンもちょっと驚いた模様で、話を続ける。
オ「私もカメラをやってましてね、昔はハッセルとかを
使ってましたよ」
匠「ハッセル、いいですね、でも40万円位してましたね」
オ「レンズも高かったです」
匠「ツアイス・プラナーですしね、それに6x6判は枚数も撮れない」
オ「そう、12枚くらいしか撮れない。1枚1枚慎重に撮りました」
匠「それに比べると今は天国です、蜂を追って無駄撃ちをいくら
やってもタダですしね」
オ「アハハ・・」
しばらく写真談義に盛り上がったのだが、まあ、でも話を聞くと
やはり銀塩時代のカメラマンだ「写真は光と影だ」「写真は
真実を写すものだ」こうした、昔の時代の撮影コンセプトを
今でも持たれている模様であった。
綺麗な桜とかを撮りに、遠くまで行く事もあると言う。
まあ、デジタル時代は、撮影コストの点以外にも、様々な点で
銀塩時代とは撮影に対する考え方自体も大きく変化してきている、
だが、結局のところ、そのあたりは個人の捉えかたの差もある、
50年前の3000円のレンズを振り回して遊んでいるのも良いし、
総額80万円の機材で、神妙な顔をして桜の写真を光と影を
考えて半日かけて1枚撮るのも良し。
まあでも、趣味の撮影ならば、何が面白いか?という事に
つきるのではなかろうか?時代とともに撮影機材も大きく変化し、
それにより撮れる被写体も大きく変化した現代であるから、
色々と新しい事を試してみるのも、楽しい事だとは思うのだが・・
次回記事に続く。